12. 最後の1週間

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「あ、やっと起きたか」 はっと目を覚ますと、マンションのエントランス前だった。 「……すみません、もしかして私寝てましたか?」 「俺が車に戻ってきたらすでに寝てたよ。疲れてたんだな」 「ご、ごめんなさい…」 「いや俺こそ急に外連れまわして悪かったな。ほら、頭気をつけろよ」 差し出された手を掴んで車を降りた。 洸は玄関でキーをスタッフに預けて、自分たちはエレベーターで部屋まで上がる。 「加賀城さん、今日はありがとうございました。楽しかったです」 部屋に着いて靴を脱ぎ自分の部屋へ入る前に、清流は改めて洸に向き直ってお礼を言った。すると洸がこれ、と紙袋を差し出してきた。 「え?」 突然のことに、清流は首を傾げる。 自分が買ったもので車の座席に置き忘れていただろうかと思って受け取ると、中を覗いて驚いた。 「……あの、これって」 「開けて」 留めてあったテープを外して紙袋を開く。 間違いない、あのお店で見た赤のグレンチェック柄のワンピースだった。 「俺が店から出てきたときずっと見てただろ。その後も何回か店の近く通るたびに見てたし。それにたぶん清流に似合うと思ったから、プレゼント」 買って戻ってきたら清流がもう寝てて、渡すタイミングが今になったけどと洸はおかしそうに笑う。 ―――あぁもう、どうして。 胸の奥から熱いものが込み上げてきて、清流は知らずに唇を噛み締める。 (どうしよう、やっぱり加賀城さんが好きだ) 絶対に知られてはいけないと分かりつつ、ひとたび気を抜けば零れ出てしまいそうで、それをどうにか押しとどめた。 「………ごめんなさい、私、受け取れません」 自分には、受け取る資格はない。 清流は俯いて、そっと紙袋を押し返す。 洸の顔が、見れない。 見てはいけない気がした。 もう一度小さく、ごめんなさいと言って、部屋のドアを閉めた。
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