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それから3日後、清流がここを去る日を迎えた。
最後の日、清流は仮病を使って休むことに決めていた。
まずは朝、洸にスマートフォンからメッセージを送り、体調が悪く会社を休む旨を伝える。
顔を見ると決心が揺らぐ気がして、心配をして部屋のドアをノックする洸とは「万が一移してはいけないから」と言ってドア越しに会話をし、顔を合わせないようにした。
もし洸が入ってきてもごまかせるようにベッドに横になっていたけれど、洸が強引に部屋に入ってくることはなく、洸が出社したのを確認してベッドから出た。
窓際に立ってカーテンを開けると、雨が降り出している。
(そういえば、初めて会ったときも雨だったな)
自室として使わせてもらっていた部屋。
そのデスクの前に座り、清流は用意していた便箋を取り出した。
1枚目は、一身上の都合を理由にした退職届。書き終えた便箋を封筒に入れる。
次に2枚目のまっさらな便箋を前に、清流は大きく息を吐き出してから再びペンを走らせた。
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