1. 救いの手

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それから教えてもらったホテルを訪ねたものの、結果はどこも同じだった。 今は旅行シーズンで、どこも混み合っているのだという。 駅前近くに戻ってきた清流は、さすがにため息を吐かずにはいられなかった。 こういうトラブルに直面すると、やっぱりツアー旅行にするべきだったと思ってしまうが、そんなことを考えても仕方がない。時間はもうすぐ午後5時になろうとしている。 (とりあえず、今日泊まれるところを探さないと…) スマートフォンとガイドブックを交互に見比べるも、もうこの周辺にはこれまで断られたホテル以外は無さそうだった。 さらに悪いことは重なるもので、今日1日は持つと思っていた天気が急激に怪しくなったかと思うと、冷たい雫が頬を伝った。雨だ。 ポツポツと、ガイドブックにも次々雨粒が落ちて染みを作っていく。 「はぁ…もう最悪だ、」 折りたたみ傘は持っているものの、嵩張るからとスーツケースに入れたままだった。こんな屋外で全開にして探すわけにもいかない。 周囲の人々は、突然降り出した雨を避けようと駆け出している。 清流も一瞬雨宿りをしようかと考えるも、すでに全身が濡れてしまっていた。今さら慌ててもどうしようもなさそうだと諦めて、空を仰ぎ見る。 (困ったな……) これからどうするべきだろうかと辺りを見回すと、目の前の大通りを渡った先に細い路地が見えた。
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