193人が本棚に入れています
本棚に追加
キミに「好き」だと伝えたい
私、橋下 純夏の住む町は毎年8月最後の日曜日に、お祭りが開催される。
「純夏ーっ! 何やってんだよ。早く来ないと置いてくぞ」
「待って、今行くから」
家が近所の幼なじみ・中嶌 海に声をかけられた私は、急いで玄関を出る。
夏の始めに新しく買ってもらった、白地に赤い金魚が描かれた浴衣をお母さんに着せてもらって。
いつもはストレートのセミロングの黒髪を、今日はお団子にまとめて。
軽くメイクをしていたら、遅くなってしまった。
「おっ、お待たせ! 海」
私を見た海は、ほんの一瞬目を大きく見開いたように見えたけれど。
「ったく。遅せぇんだよ、純夏は。行くぞ」
ほんのりと顔を赤らめた海は、スタスタと歩いていってしまう。
私も急いで、海のあとを追いかけるけれど。
カランコロン。
慣れない下駄を履いているせいか、いつもよりも歩きづらくて。海になかなか追いつくことができない。
すると海が立ち止まり、こちらを振り返る。
「純夏、お前どんだけ歩くの遅いんだよ。ノロマ!」
海の叫ぶ声は、蝉の鳴き声のようにうるさい。
「し、仕方ないでしょ? 今日は下駄なんだから」
「はぁ……。ほんと、しょうがない奴」
盛大なため息をつくと、海の大きな手が私のほうへと伸びてくる。
最初のコメントを投稿しよう!