キミに「好き」だと伝えたい

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そして、翌日。 海は家族とともに、関西へと引っ越していった。 ◇ 9月1日。新学期の朝。 「純夏! 朝よ。起きなさい! 今日から学校よ」 お母さんが7時を過ぎても起きてこない私を見兼ねてか、2階の私の部屋へやってきた。 「早く起きて朝ご飯食べないと、遅刻するわよ」 「はーい」 私はようやく起き上がり、頭がボーッとする中で白のセーラー服に着替える。 「行ってきます」 朝食をとり支度を終えると、私は学校へと向かって歩き出す。 家の近所の公園の前を通ると、昨日までとは違いそこはシンと静まり返っている。 ……そうか。今日は公園がやけに静かだなと思ったら、蝉の鳴き声がしないんだ。 あれだけ毎日のように朝早くから、大合唱していたというのに。 うるさく感じていたはずの蝉の声もパッタリと聞こえなくなると、なんだか少し寂しい。 「おい、ヒナ。早く来いよ」 「みっくん、待ってー」 私が公園の前で立ち止まっていると、紺色とピンクのランドセルをそれぞれ背負った小学生の男の子と女の子が駆け抜けていく。
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