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「……っ、海ぃ」
いつの間に、私の机にこんな手紙を入れてくれていたのだろう。
まさか、海も私と同じ気持ちでいてくれてたなんて。
私たち、両想いだったんだね。
夏祭りのあの日、海に自分の本当の気持ちを伝えなかったことが悔やまれる。
後悔したって、もう遅いのに。
「……っ、」
今すぐ海に会いたい。
海に会って、キミに「好き」だと伝えたい。
私も同じ気持ちだよって。
「海の引っ越し先の住所、聞いておけば良かったな」
そうすれば、せめて海に手紙だけでも書くことができたのに。
海の家は、親が厳しくて。高校生になるまではスマホは持たせてもらえないと、海が以前言っていたから。
私は、教室の窓から空を見上げる。
どこまでも晴れ渡る空にはうろこ雲が浮かび、窓から入ってくる風でカーテンがゆらゆらと揺れる。
この空は、海の元へと繋がっているのだろうか。
海も今、この青空を見てるかな?
……見てるといいな。
私たちは今、離れた場所にいるけれど。
ふたりの気持ちは、どこにいてもきっと同じ。
私も海のことが好きだし、海と同じように私も海の幸せを願っている。
「海。いつかまた会えたらそのときは……海が好きだってこと、ちゃんと伝えさせてね」
いつか彼に必ず会えると信じ、私は空へと向かって微笑んだ。
【完】
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