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「お前の手、俺が繋いでてやるよ」
海が私の手を、ぎゅっと握ってきた。
「慣れない下駄なんか履いて、ドジな純夏にもし転ばれでもしたら大変だからな」
そう言うと海は、私の手を引いて歩きだす。
先ほどよりも、海の歩く速度はゆっくりで。
さりげなく車道側を歩いてくれている。
たまに嫌なことも言われるけど、何だかんだ海は優しい。
「そう言えば、今日の純夏の髪型……」
「なに?」
「なんつーか。か、可愛い……な。俺、それ好きだわ」
「えっ!」
照れくさいのか、自分の頭をがしがしと搔く海。
「浴衣も、その……お前に似合ってるよ」
うそ。まさか、海がストレートに褒めてくれるなんて。
てっきり、憎まれ口を叩かれるとばかり思っていたから。
「…………」
赤ちゃんの頃から今日まで15年間一緒に幼なじみとして過ごしてきた中で、海が私にこんなことを言ってくれるのは初めてで。
反応に困った私は、黙り込んでしまう。
「おい、純夏。黙ってないで何か言えよ」
海のほうを見ると、顔がゆでダコのように真っ赤になっている。
「……ぷっ。海の顔、真っ赤。可愛い」
真っ赤な顔の海はなんか新鮮で、悪気はなくつい笑ってしまった。
「う、うるせぇ」
耳まで赤くなった海は、ふいっとそっぽを向いてしまう。
「笑っちゃってごめん、海。褒めてもらえて嬉しいよ。ありがとう」
「おー。最初から素直にそう言えよな」
「はーい」
偉そうだけど、私はそんな海のことが好きだ。
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