1人が本棚に入れています
本棚に追加
或る星に小さな島国がありました。国名をジェーといいました。ジェーから見て西側の海の約800海里程隔てた所に大きな国がありました。国名をシーといいました。
資源が乏しく自給自足出来ないジェーは資源が豊かで自給自足出来るシーからの輸入に頼っていました。それにジェーにとってシーは最大の貿易相手国で最大のインバウンド国ですからジェーはシーと仲良くする方が良いに決まっているのです。
ところが、この二つの国が仲良くなることを面白くなく思っている国がありました。国名をエーといってジェーから見て東側の海の約5400海里程隔てた所にある大きな国でした。
何しろエーにとってシーはライバル国でシーがジェーと貿易したりすることによってエーより国力を高めることを恐れていたのです。それにエーにとってジェーは子分みたいな国なのですが、ジェーが寝返ってシーと組んでエーに攻めて来ることを恐れていたのです。
そこでエーはジェーにシーがジェーを侵略しようとしていると脅し、戦力を高めないと本当にシーが攻めて来るぞと煽り立て自国の武器をジェーにたくさん買わせて儲けることにしました。
ジェーはエーからの輸入にも頼っていますし、エーの子分みたいな国ですからエーに従いますし、シーを驚異に感じてエーの武器をせっせと買いました。それも倉庫に眠っていた時代遅れの兵器をエーの言い値で買わされたのでした。
堪ったものでないのはジェーの国民です。何しろ徒でさえ大企業や金持ちを優遇する金融政策の所為で貧困層の底上げが出来なくて賃金も消費も増えない上、主要貿易相手国同士の戦争や世界的な疫病の影響で生産力の低下や物流の滞りなど招き、物価が上がって不景気なのに武器をたくさん買うための資金を増税とか社会保障費を削るとかして賄われたのですから。
大体、軍事力を増強してもシーの軍事力に対して質も量も遥かに劣っていて焼け石に水なのです。おまけにシーはジェーに攻め入ったら国連を敵に回し各加盟国から制裁を受けエーを軍事的に敵に回し経済が衰退し犠牲者を多数出すといった具合にデメリットばかりですから戦争する気はないのです。従ってジェーは必要ないことにお金をかけている訳で国民のお金をドブに捨てるようなものですが、ジェーがエーにそそのかされて軍事力を強化していることを知ったシーは、ジェーを危険視するようになり、またエーがジェー列島を最前線にしてシーに攻め込んでくることを恐れて軍事力をさらに高めていきました。
こうなるとジェーとシーはどんどんお互いを敵視するようになりました。そしてジェーは負のスパイラルに嵌っていきました。どういうことかと言うとジェーはシーに負けじと軍事力強化するに当たって自国でも武器を作れるように軍需産業に力を入れてまで軍事に関する予算を増やすべく、ますます増税する上、社会保障に関する予算を削ってしまいます。それに大地震が起こることが予想され、その際に原子炉が破損してメルトダウンして被曝する恐れが十分あるのに大手電力会社や宣伝会社と癒着する政府は利益を得る為、また核兵器を作る為、プルトニウムを取り出せる原子力発電を止めようとしません。ですから国民をますます貧しくしながら戦争と被曝の危機にさらしていくのです。かてて加えてジェーは少子高齢化が進み、それに連れて働き手が減り、人手不足で経済が縮小していき、貧困化に拍車がかかります。後継者の少ない各産業もそうですが、志願者の少ない軍隊も人手不足の深刻さは半端でありません。その理由も含めて軍事力強化したって全く無駄で意味ないんです。それどころか祖国を滅ぼすのです。だってこのまま軍事力を高めながらジェーとシーの仲が悪化すれば、ジェーはシーから輸入出来なくなって原材料も飼料も肥料も底をついて物不足と食糧危機に陥り、戦争する前に自滅しますし、戦争したって勝ち目がないじゃないですか!
そう考えると政府のやっていることが如何に愚かで馬鹿げているか、気づきそうなものですが、未だにジェーの国民のほとんどが気づいていません。もし、気づいたら世紀の大発見をしたくらいに本人だけで大騒ぎして周りの人たちからクレイジーに思われるかもしれません。それ位、クレイジーな人が普通の人としてうじゃうじゃいるようなのです。
最初のコメントを投稿しよう!