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その日は丁度、土曜日。
佳太と瑠奈は、週末ながらに学校が休みだったのだけれど、偶然にも、悦子も又、久々の休暇の日なのであった。早紀が悦子の家を訪れてから、彼此20日程が過ぎていた。
「‥‥‥ねぇ、悦子?‥‥‥今日の夜の御茶会って、ワタシなんかが一緒でも大丈夫なのかしら。。。」
「‥‥‥大丈夫だってぇ。そんなの気にしなくても良いわよ。それに、早紀が一緒だと、瑠奈と佳太も喜ぶから。。。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥。。。」
悦子の暮らす白金台のマンションのリビングにあるテーブルの上には、『土成屋』と記された白い封筒が置かれていた。その封筒の表には、『特別優待券在中』と言う文字が書かれている。
‥‥‥‥‥そう。
このボクがパティシエとして働いている製菓店の創立10周年を記念しての得意先に贈られたチケットだった。コンビニエンス・ストアの経営者でもある光恵が残して行ったモノであるらしい。
光恵は、悦子に話していた。コンビニエンス・ストアで違法行為に走ってしまった児童達とその理由。それは、誰も彼もが、それぞれの家庭の中の不和が非行に走らせているらしい。人類世界の近代化に伴い、夫婦共働きの家庭が増加する中、少子高齢化の問題。明らかに、人と人との会話が希薄になりつつある現代社会で生きる青少年が抱えてしまうストレス。
それらの問題を解消する為、一家団欒の場を提供する為の企業イベントとして、製菓店である土成屋では、催し物が三日間に限り開かれていたのである。生憎、ボクの様なパティシエの立場からすると、只管に顧客のニーズに合わせて、スポンジ作りに励むだけなのだけれどネ?
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