モノローグ 〜 ボクの居場所

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モノローグ 〜 ボクの居場所

暗闇の中で、ボクは目を覚ました。 テレビを付けたまま、部屋の灯りも付けずに布団を頭からかぶっていたボクは、ふと、部屋の時計に目をやった。 「‥‥‥深夜2時過ぎ、かぁ。。。」 ボクには、時間の感覚と言うモノが、無意味なモノの様に感じられてしまっていた。山陽新幹線爆破事故。あの日以来、パティシエとしての仕事にも、劇団員としての活動にも身が入らずにいたボクは、今迄の環境から離れるかの様に、アルバイト先の製菓店や劇団にも長期休暇を貰い、暫くは腑抜けた引き篭もりの生活を送っていたのだった。 ‥‥‥山陽新幹線爆破事故。 西暦2022年12月24日に起きた惨劇。その出来事が事件なのか、事故なのか、最早、ボクにとってはどうでも良い話だった。只、ひとつだけ言える事は、‥‥‥ボクにとって、かけがえの無い存在が失われたと言う事。 ‥‥‥虹谷百合子。 彼女と出会えたからこそ、ボクは、東京の町で劇団の旗上げ公演が出来た、と言っても過言では無かった。個人で劇団を主宰出来たとしても、案外、日常での暮らしは心底苦しいのかも知れない。最初の頃は、中々収益を得るには到底及ばない。それでも、信念を持っているからこそ、‥‥‥アルバイトを繋げながらの毎日の稽古。その稽古場も、アルバイト先の製菓店での待遇も、百合子の口利きのお陰で、今日がある。 高校時代、初めて出会った頃は、彼女とは同じ部活の時間を共有している、只それだけの間柄であったのに、いつの間にか、百合子が笑顔でいられる場所、‥‥‥それが、ボクの居場所なのだった。 ‥‥‥そう言えば。。。 ボクって、其処の君にも、家族の事については明かして無かったよネ? ‥‥‥‥‥‥‥‥。。。 ボクには両親の他、大学生の姉と中学生の妹がひとりいたんだけどね。度重なる地震の影響で、高校時代に暮らした家は疎か、家族の皆も震災の被害で失ってしまったんだ。それでも、学校に行けば百合子がいたから、ボクは独りぼっちにはならなかった。 百合子の存在が、ボクにとっては、たったひとり切りの家族みたいなモノだった!
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