モノローグ 〜 ボクの居場所

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その日は、何時に無く、春先を待ち侘びている季節にしては肌寒く感じてしまい、日頃はエアコンの暖房に頼る事も無いボクだったのだけれども、その日に限っては一日中、部屋を暖めるに及んでいた。 半ば放心状態のままで、オーブンに火を入れて、その合間に、小麦粉をボールに入れ、生地を焼く準備をする。充分に温めたオーブンの扉を開けて、型に入れた生地を中に入れようとしたその時‥‥‥。 不可思議な現象が、突如として、ボクの目前で起きてしまったのである。何がどうしたと言うのだろうか、突然、オーブンの熱気に充てられて、辺り一面に粉塵が起こり、爆発してしまったのである! 何分、爆発の程度も軽く、火災や怪我に至る迄には及ばなかったものの、それでも、ボクにとっては、充分な程に過失であった事には相違は無かった。‥‥‥しかし、何故!? ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。。。 以前、何かしらのテレビの情報番組で、小麦粉爆弾をテーマに色んな実験をしているのをその目で観た事を思い出した。 ‥‥‥‥‥‥小麦粉爆弾。 小麦粉の様な至って自然に手に入れられる様な代物でさえも、何かしらの条件が揃っていると、爆発現象を起こすらしい。それはそうなのだけれど、何故、今回に至って、その様な事になってしまったのかは、未だに解明出来てはいない。‥‥‥でも。 ‥‥‥爆弾。‥‥‥爆破事故。 その様な言葉を耳にしてしまうだけで、ボクにとっては、胸の締め付けを感じさせる程のトラウマに陥ってしまう。 百合子が背負わされてしまった運命。取り戻す事の出来ない過去。ボクは、百合子だけに過酷な運命を背負わせてしまった。あの時、山陽新幹線が爆破事故を起こしてしまった時に、どうして、ボクは百合子の傍にいられなかったのだろう?彼女と一緒にこの世から消えてしまうのなら、‥‥‥それでも、ボクは別に構わないとさえ思っている。 ‥‥‥それなのに。‥‥それなのに。 最早、ボクにとっては、事故の原因を起こした相手に対しての恨みや憎しみと言った感情よりも、寧ろ、何の役にも立てなかった自分自身への嫌悪感ばかりが残されたままである日常が続いていた。
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