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江藤は、続けて、坂巻に尋ねた。
「‥‥‥因みに、アナタが彼女の部屋に侵入した時、玄関の鍵はどうなってましたか?」
「それは、‥‥‥勿論、開いてたけど。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
さりげなく、江藤は、ふと自らの腕時計に目をやった。時刻は、夜の7時20分を過ぎようとしていた。何やら、彼の脳裏に恍惚とした不安に因る動揺が走り始めた。
(‥‥‥今夜の早紀との待ち合わせの時間には間に合いそうに無いかぁ。。。)
その日、江藤は、夜の8時に駿河早紀と待ち合わせて、悦子達と一緒に食事会に参加する予定ではあったのだけれど‥‥‥。
「‥‥‥何、独りで、訳分かんない事、ボソボソ言ってんだよ?‥‥‥俺、急いでんだよネェ。食いぶちも探さなきゃならないってのにぃー。早く終わらせて欲しいんだよ。それにさぁー、玲美の奴、既に死んでしまってんだろ?‥‥‥今更、周りのその他大勢が大騒ぎしたって、仕方無くねー?」
唐突に、坂巻が、江藤に向かって、愚痴を溢すかの様に口を開いた。思わず、動揺してしまう江藤。
「‥‥‥エェェ〜ッ!‥‥‥ひょっとして、さっきの言葉って、聞こえてました?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥。」
坂巻は、無言で頷いて見せた。
「‥‥‥アナタって、地獄耳ですネ。心の中で呟いてたつもりなのに。」
(‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥!!!)
その時、江藤は、思わず何かに取り憑かれたかの様な戦慄を覚えてしまい、心の中で何かが弾ける様な疑問を感じるのだった。
「‥‥‥アッ、ひとつだけ良いですか?捜査報告書の中では、アナタは、隣の部屋から言い争う声が聞こえて来た、と証言されていたみたいですけど。‥‥‥因みに、アナタの住まいであるマンションって、隣の家との仕切りの壁には防音材が使用されているみたいなんですよネ。‥‥‥それなのに、何故、隣の家から聞こえる音がアナタの耳にまで届いたんでしょうか?‥‥‥ひょっとして!」
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