取調室は蚊帳の中

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その時、思わず、坂巻の表情は、僅かながらに青褪めてしまっていた。 「‥‥‥あのぉー、刑事さん。‥‥‥こんな事を言ってしまうと、俺、罪に問われたりなんか、すんのかナァ。」 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥?」 坂巻は、唐突に、挙動不審な態度に変わり、何やらシドロモドロな口調で、江藤に向かって呟いた。江藤は、その視線を坂巻の方へ向けて、落ち着いた口調で答えた。 「‥‥‥話の内容にも因りますけど。何か捜査に関わる話があるなら、隠さずに話してくれますか?‥‥‥悪い様にはしませんから。此処にはアナタと僕しかいない。言ってみれば、蚊帳の中でいる様なモノです。」 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥。。。」 その時、坂巻は、恐る恐る重い口を開けようとするのだった。 「‥‥‥実は、俺、派遣を通してバイトを続けて食い繋いでたんだけどよ。‥‥‥瞬間接着剤って奴?‥‥‥アイツの臭いがプンプンしてやがる工場で作業しててさ。それがイヤになって、辞めちまったんだけど。でも、他に何して良いか分からずに家で引き篭もってたら、隣の部屋から言い争う声が度々聞こえて来るモンだから。。。」 「‥‥‥だから。‥‥何です?」 「‥‥‥そのぉー、その音が気になってから眠れなくなって、少し前に文句を言おうと思って隣の家へ行ったら、生憎、誰もいなくってよ。でも、鍵開いてたから、部屋の中に入って、その、つまり、‥‥‥出来心で、昔、闇サイトで手に入れた盗聴器を仕掛けてしまってさぁ。‥‥‥それで、そのぉ。」 「‥‥‥どうして、そんな真似を?」 その時、何気無く夜空に散らばる星々を眺めるかの様な眼差しで、坂巻は、淡々と語り始めた。
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