取調室は蚊帳の中

4/4
前へ
/58ページ
次へ
「‥‥‥世の中、星の数ほど人がいて、色んなドラマや夢がある筈だけど、俺なんて、友達ひとりすらいないから、‥‥‥たまに思ってたんだ。俺の知らない誰かと誰かの会話を聞いてみたいって。‥‥‥の筈だったんだけどさぁ。」 そう言って、坂巻は、江藤の目前に、どうやら盗聴した内容を録音したデータが入ったUSBメモリーがギッシリ詰まったプラスチック・ケースを差し出すのだった。 「‥‥‥‥‥これは?」 その時、坂巻は、しんみりとした面持ちになり、呟くかの様に話し始めた。 「‥‥‥その、‥‥‥だから、‥‥捜査の役に立つかと思って。‥‥‥案外、人間なんて、自分の事で必死になっちまうと、隣の家に誰か住んでても、気付かなくなってんのかな?だから、俺、玲美の為に何も出来なかったから、せめて、アンタ達の捜査の手伝いくらいはしたいと思ったから。」 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥。。。」 その様な坂巻の、その瞳を潤ませながら語り続ける姿を目の当たりにしながら、江藤巡査部長は、ゆるりと頷きながら、その証拠品となるであろうケースを受け取るのだった。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加