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「‥‥‥ボク、罪を償うよ。」
ところが、悦子は、ボクの両腕の手首に自らの左手を置いて、呟いて見せた。
「‥‥‥一体、何の為に?」
「‥‥‥‥‥‥エッ?」
如何にも不可思議な表情を浮かべて、まじまじと悦子の顔を見つめているボクに向かって彼女は答えた。
「‥‥‥アナタ、まだ、誰の事も傷付けて無いじゃない。‥‥‥それに、事件はもう終わったのよ。全ては、終わった事なの。今更、蒸し返したって、仕方が無いの。それと。」
悦子の表情が仄かに変わり、彼女は、ボクに告げた。
「‥‥‥習志野君。アナタ、何だか思い違いをしてるみたい。‥‥‥百合子は生きてるわ。さっき、救護班の方から連絡があったの。今迄の間、心肺停止状態だった百合子が、先程息を吹き返したってぇ!」
「‥‥‥‥‥‥!?」
「ムチ打ちの影響で、暫くは半身不随の状態は続くだろうって。でも、リハビリを続けていれば、やがては完治する兆しは見えてはいるらしいの!‥‥‥それまで、百合子の傍でいて、介抱する事。それが、アナタにとっての罪の償い方なんじゃなくて?」
「‥‥‥悦子!‥‥ボ、ボク。。。」
ボクは、その時、その瞳から大粒の涙を流していた。悦子と柳田班の署員の面々も、それから、車両に乗り合わせていた乗客も皆、その様なボクの姿を、温かな笑みを浮かべて見守っていてくれていた。そんな気がする。
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