溢れ日の下で‥‥

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溢れ日の下で‥‥

あの日以来、ボクを待ち受けていたのは、今では車椅子生活となってしまった百合子の介抱をする毎日。お医者様の見立てでは、2ヶ月程のリハビリで完治はするらしい、との事ではあったのだけれど。 百合子にとっても、このボクにとっても、時間ばかりが解決する話の内容には思われないのかも知れない。 ボクには、その心を支えられる相手もいてくれるし、支えてくれる人もいる。それに、ボクには、劇団と言うライフワークがあって、パティシエと言う道がある。‥‥‥こんな激動の時代の中であっても、それでも、順風満帆な暮らしが出来るボクは、誰かに言われる訳では無いのだけれど、充分、仕合わせであるとは言えるのかも知れない。。。 ‥‥‥だけど。 今でも思う事がある。‥‥‥洞之上青年は、何の為に生き、何の為に死んでしまったのだろうか?‥‥‥ヒトとしてのアルケーの部分を考え続けてても、それだけで生涯が終わってしまうのかも知れない。でも、誰かの笑顔を護る為に何をするのか?‥‥‥それが、そのヒトが、人間として歩む人の道の様に思われるのだけれど。 ボクには、その洞之上と言う人間の人となりについては皆目見当も付かない。しかしながら、思ってしまう事はある。もっと、賢い生き方って、出来なかったのだろうか? 割り切れない気持ちを覆い隠せないままに、ボクは、今日の朝も百合子の為に玄関のドアを開ける。彼女の笑顔を護る為に‥‥‥。                 《 完 》
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