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第8章 団欒(だんらん)
松下家の三女の雪子が洋一のもとを去った翌日の午後。
雪子と入れ替わるように、母の実家である松下家に四日間ほど泊りがけに行っていた妹と弟が戻ってきた。
浴衣姿(ゆかた)の祖母に連れられて、嬉しそうに久しぶりの我が家に足を踏み入れる。
祖母が高木家を訪れるのも久しい。
やはり三姉妹の実家だけに、娘達や孫が鷺沼の実家を訪れることの方が圧倒的に多い。
洋一も笑顔で三人を迎える。
子供たちは早々に、子供雑誌、虫籠、お菓子などを抱えて、自分たちの部屋へと駆け込んで行った。
「洋一には、何も買ってこれなかったのよ、少しだけどこれお小遣い」
と、祖母は財布から紙幣をとり出す。
「ありがとう、おばあちゃん」
祖母に近寄って手を伸ばすと、祖母は紙幣を指に挟みながら、洋一の手をその柔らかな両手でやさしく掴む。
その手の感触が夏江のそれと同じだったので、一瞬、彼の手には小さな電流が走った。
「怪我してアルバイトを休んでいるのだろう、小遣いが足りなくなったら、いつでもおばあちゃんに遠慮なく言うのよ」と、いつもように優しい笑みを浮かべて言う。
祖母の引率で妹弟が帰宅したことで、4日ほど続いていた継母との夜の情事から解放されるものと少年は考えていた。その間には、継母の二人の妹達などとも性交を重ねてしまった。若い肉体には少しばかりの余裕があった。
ただ、女達の貪欲な性欲と支配力には、精神的な圧迫感が強く残っていた。
特に、育ての母としか考えていなかった夏江の熟女としての肉体には、これまで感じていなかった女としての深い艶美に魅入られてしまった。
彼女の母性愛をより強く感じるとともに、一人の女性としての愛欲が入り混じった複雑な愛が注がれている。
その彼女を愛する男として、洋一も若い肉体とその心で女を独占しようとしている。
若い男も継母のその強すぎる愛の決意をひしひしと感じている。
こんなにも心が動揺し、胸が圧迫されるのは生まれて初めてのこと。
それでも、今夜は久しぶりに、普段の家庭に戻れるという安堵感があった。
夏江がパートから帰宅すると、家庭の中は一気に明るくなり、いつもの賑やかさが戻ってきた。それに今夜は祖母の幸恵も泊りがけで来ている。
親子三代が揃い夕食の団欒は、特別に明るいものだった。
妹と弟は、祖母の家で起きた夏休みの小さな出来事を笑顔で話す。
蝉や虫採りの話、夜の盆踊りから屋台での買い食いなどを屈託のない笑顔で喋る。
祖母も母も相好を崩してそれらの話に耳を傾ける。
ただ、最後には夏休みの宿題の話になり、全く宿題には手を付けていないことが判明する。夏江は洋一に、食事が済んだら子供部屋で宿題をみてあげるようにと指示する。
食事が済むと、兄弟3人が子供部屋に移った。
ダイニングに残った祖母と母は、久しぶりに親子水入らずの会話に弾んでいた。
就寝
やがて、宿題と連泊の疲れで妹弟は入浴も忘れて、二段ベッドに飛び込んで寝入ってしまった。
ダイニングに戻った洋一は、テレビを一人で見ていた。
祖母が食事の後片付け、母は洗濯機を回して子供たちの服などを洗う。
そうしたいつもの家庭内の日課が終わったのは、夜の10時をすぎた頃であった。
夏江が祖母と洋一に風呂に入るように言う。
祖母が先に風呂場に向かう。
祖母が風呂に入るのを確認した夏江は、テレビを見ている洋一に近づき、小声で耳打ちをする。
「今夜は、洋一の部屋でおばあちゃんと寝て頂戴ね。私の部屋でお前と寝るわけにはいかないからね」
「うん、わかった」
洋一は予想していたように、今夜は母とのセックスはないと思った。
だが、それは違っていた。
さらに母の耳打ちが続いた。
「おばあちゃんが寝入ったら、静かに部屋を抜け出して、私の部屋においで」
「ええっ」と驚いてみせた。
「私、もう明日には生理になりそうなの、教えたでしょう。女は生理の前が、一番セックスをしたいのよ」
「わかりました」と頷いてみせた。
期待してはいなかったのに、心のどこかに小さな炎がちろちろと燃えていた。
「明日からしばらくは、私を抱けないからね」とも言われ、コックリと頷いた。
最後に夏江が彼の頬に口付けをすると、同時に手が伸びて男の股間をまさぐった。
悶絶
夏江の部屋と洋一の部屋は、ダイニングを挟んだ両脇にある。
西側の夏江の部屋はドアで出入りする。
一方、洋一の部屋は3枚の唐紙の戸で出入りができる。
両部屋とも畳敷きの和室で、ともに南側のベランダに出られるガラス戸がある。
つまり、そのガラス戸を通じてベランダに出れば、隣のダイニングにも、一方の和室にも行き交うことができる。
やがて、祖母の幸恵は風呂から出てくると、小太りの体をバスタオルで拭きながら二人に声をかける。
ダイニングにいた二人に「もう寝るわね、長い間の孫の世話で疲れたわ・・・おやすみなさい」と言って、すぐに洋一の部屋に消えていった。
その裸身の後ろ姿は夏江とよく似ている。
ひと廻り小さいが小太りで肉付きがいい。
臀部も、いくらか垂れた乳房も膨らみが十分にある。
58歳になった今も、大きく肉が落ちておらず、まだ女としての色香も秘めていた。
部屋に入る幸恵を確認した夏江は、目配せで洋一に「すぐに風呂に入って」と指示を送った。いそいそと彼は、命じられるままに風呂場へと向かった。
シャワーで済ませようとしたが、祖母が浴槽に湯を沸かしていたので、久しぶりに熱い風呂に浸かった。
いつもよりも長い入浴になった。
風呂を出ると入れ替わりに、すぐに夏江が風呂場に向かう。
洋一は一人、ダイニングで体が冷めるのを待っていた。
やがて、夏江が風呂から上がってきた。
バスタオルを豊満な体にまとい、息子に近づく。
女の柔肌の香しい匂いが洋一の鼻を突いた。
息を吐きながら再び耳打ちする。
「お前も、もう寝なさい。おばあさんが寝入ったのを確認したら、そっとベランダから出て、私の部屋においで、分からないように静かに抜け出すのよ」
彼女の荒い呼吸が耳に振動する。
彼は黙って頷いた。
自分の部屋に入ると、電燈を薄明りに灯して祖母が寝そべっていた。
ふとんと夏掛けが用意されていた。
しかし、スキャンティ一枚の裸で寝ているようだ。
声を押さえて「おばあちゃん寝たの?」と声をかけたが、何の反応もなかった。
彼女の隣に敷かれた自分のふとんに寝ころんだ。
頭の後ろに手をあてて、仰向けに寝そべった。
しばらくすると、小さな寝息が洩れてきた。
それを聞いた洋一は、逸る気持ちを抑えるように静かに起き上がる。
ベランダへと歩を進めた。
開けっ放しの戸を抜けて、ベランダを渡って夏江の部屋に入った。
夏江も薄明りの中で、大の字に長い脚を広げてふとんの上に寝ていた。
ただ素っ裸だ。
少年はすぐにそのみごとな裸体にのしかかった。
いつものクッションの良いボディに弾んだ。
二人は、おもむろに激しい口吸いを行う。ねっちりと長いキス。
口を離すと、すでに二人は欲望が湧きたって荒い呼吸をしていた。
これから始まる、性の饗宴に期待する心臓の鼓動が互いの胸に伝わる。
その後二人は、ダイニングを隔てたその向こうの部屋で、祖母の夏江が聞き耳を立てているとも知らず、激しくお互いの体を貪の合うのだった。
少年の耳に女の荒い呼吸とともに、喜びの嗚咽が聞こえ出す度に、彼は声を押し殺して囁いた。
「母さん、声を押さえて。喘ぎ声をあげちゃダメ。我慢して」と諭す。
女は答える代わりに、手で自分の口を押えていた。
聞き耳
洋一は継母の額にお休みのキスをして、彼女の部屋を後にした。
足を忍ばせて、ベランダから自分に部屋に戻った。
そして自分のふとんに大の字に寝た。愛する母という女を征服した充実感があった。
身も心も満たされ、すぐに眠りに入れそうだった。
寝入った直後、少年の股間に触れる気配に起き上がった。
誰かが股間のものを手にしていた。
彼は無言でこの成行きを見守った。
しばらくして小さな声で「おばあちゃん、こっちに来て」と呼んでみた。
その孫の声に、すぐ手を休めた祖母が彼の枕元にやってきて、その横に寝そべった。
祖母の幸恵が小声で囁いた。
「私にも頂戴」
「ええっ、何を?」
「とぼけてもダメ、ずっと聞こえていたのよ。二人の激しいセックス」
「・・・」
「振動はね。体の動きだけで伝わるわけではないのよ。声だって音だろう。音を出せば空気に伝わって、かすかに振動するもの。だから小さな喘ぎ声でも、腰の突き上げでも、音として伝わって振動するものなのよ」
「バレバレだったの」
「特に私は聞き耳立てていたから、よけいによく聞こえたのよ。もう寝られやしない」
「起こしてゴメンね」
「まあいいさ、二人は思い切り楽しんだのだろう。今度は私を喜ばしておくれ、もうムズムズして、久しぶりに自分でいじって悶えてしまった」
「わかったよ、おばあちゃんを可愛がるから許して」
一呼吸おいてから、幸恵が洋一に質問をする。
「ところで、一体いつ頃から、夏江とそんな関係になったの?」
「・・・」
「黙っていないで、正直に言いなさい」
物静かな口調だが、松下家の長としての祖母らしい威厳がある。
観念して洋一が重い口を開く。
「先週の金曜日に初めて母さんと結ばれた」
「ええっ金曜日!」と驚く。
「ばあちゃん、声がでかいよ。母さんに聞こえちゃうよ。確かに金曜の夜だよ」
「大丈夫だ。夏江はお前に何度もイカサレテ、死んだのも同然。今は神経も麻痺しているさ」
「そう・・・でも母さんに、これからのおばあちゃんとのエッチは知られたくない」
「うんまあ、そんなに母親を気遣って。愛してしまったのかい。すっかり翻弄されて、お前いくつになったの?」
「17歳」
「17歳か、まあいい。年頃の男になっていたのだね」
続けて言う。
「夏江もやるものだね。子供達を私の家に遊びに行かせて、それも連泊させた。その間にできた二人だけの空白の時間を使って、お前を自分のモノにした。大した娘だ」
「・・・最初は肩揉みだけだったけど、いつのまにか・・・繋がり結ばれた」
「母と子とは言え、血の繋がらない男と女だ。夏江も再婚もせず、男も作らず、あんたたち子供を育てることに懸命だった。・・・まあ女の性だ。仕方ないことではある」
「・・・」
「おばあちゃんはお前達二人の事を怒らない。許すよ。だけどこれは、松下家にとっても、高木家にとっても大事な秘密になる。絶対に誰にも口外しないこと、いいわね。約束だ」
「うん、わかっているよ」
「それに、これから私を抱くことも秘密。特に、夏江には絶対の秘密だ、いいね」
「二人だけの秘密にするから、おばあちゃんも母さんに言わないでよ。約束して」
「いいとも、けな気なげだ。夏江に惚れたのね。了解さ、お前とおばあちゃんだけの二人の秘め事にしようね」
すると祖母の幸恵は孫の少年に体を寄せると、その大きな胸を彼の顔に突き出した。
乳房を吸えという仕草。
すると男は左手で女の肩を抱き、おもむろに口吸いを始める。
予期せぬキスに驚くも、女は忘れていた久々の甘い口吸いに痺れた。
その後、二人は我を忘れて長時間抱き合い、繋がったまま朝を迎えた。
主婦で、パートで働く夏江の起床は早い。
二人が抱き合ったまま眠る部屋の戸を開く暇さえない。
それが幸いして、血の繋がらない祖母と孫の二人の秘密の情事を知られることはなかった。
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