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体勢を作り待つも、一向に身体を進めて来ない禅を訝しみ、瞼蓋を持ち上げた於菟が視線を投げると、己の勃起を握った禅が、目を閉じて天井を仰いでいた。
「──何してるの?」
笑い混じりに柔らかいトーンで声を掛けられ、ハッ──と於菟へ向き直り、
「気持ちを──整えてた」
と、恥ずかしそうに笑った禅は、まるで初めて事に及ぶ少年のようだった。
照れ隠しのように、向けられた小さな尻を撫でた禅は、ゆっくりと於菟の背後に覆い被さった。
触れ合う肌の熱さは罪だった──全てを熔かそうと渦巻くかのようだ──。
岩漿のようなその熱は、一点を捉えた禅を急き立て、口の中で『小僧かよ』と自分を嗤うと、揶揄うでは無く、緊張を絆された於菟も小さく笑った。
ゆっくり身体を進めると、禅の熱に当てられたか、於菟の背中で光る汗が一筋滴り、目で負った禅の想いを連れてシーツへ落ちた。
遠慮がちに、けれど促されるまま身体を進めた禅は、容赦なく快楽を締め付けられ、降参してしまいそうな気持ちを逸らわすつもりで、於菟の名前を呼んだ。応えるように、甘い吐息に乗せて名前を呼び返された禅は、苦しめまいと加減していた筈の腰を、幻惑の中で強く叩き付けていた。暗い部屋に二人分の熱い息遣いが響き、悩まし気に快楽を叩く音が響いた。
小さく喘いだ於菟を抱き締めた禅は、前を探ると昂ぶりを捉え、其れに愛撫を与え、緩く腰を振った於菟が、喜びを口端に乗せ、それを合図と禅も法悦に極まり、小さく喘いだ於菟を抱き締めた。
同時とベッドへ崩れ堕ちる瞬間、於菟の胸は哀しい懺悔を叫び、禅の胸を満たしたのは、隠すとも無く秘めていた於菟への想いだった。
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