アカ

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 突然の大声に僕はビクッとなる。振り返ると、先輩がそんなに離れている訳でもないのに、すごく遠く離れた場所にいる人のように大きく手を振っていた。 「また会おうね!」  また、か。先輩とは今日だけの付き合いだと思ってたから共感覚のことも初めて人に打ち明けたし、無神経なことも言ってしまった。また、があるのかな。僕はフッと笑うと、先輩の方に体をしっかり向けた。 「はい、また」  決めた。僕はこの高校に進学する。この高校に進学して、美術部に入って、また先輩に会おう。 「約束だからね!」  先輩が小指を僕に向かって突き出した。指切りげんまんのポーズ。高校生になってもこれ、やるんだ。僕はそれを見て、同じく小指を突き出した。 「はい、です」  夏が終わる。そうすれば秋になって、あっという間に冬が訪れる。冬になれば、僕は受験だ。先輩と同じ学校に入れるかどうかが決まる運命の季節だ。  また先輩に会うためにも。先輩の絵を間近に見るためにも。  夏の終わり、僕の運命は揺るがされた。赤色を知らない赤色に染まった先輩に出会って、僕の心は大きく揺れた。
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