アカ

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 突然の告白に先輩はポカンとした。その表情で僕もハッとなる。慌てて誤魔化そうとしても良い言葉が浮かばない。こういう時に自分の語彙力に情けなさを感じる。 「赤色に見えるって?」  先輩がつぶらな瞳で僕を見た。「私が赤色に見えるの?」 「……先輩のが赤く見えます」  ここまで言ってしまったならもう後には戻れない。どうせ今日だけの付き合いだし、何日かしたら先輩も忘れるだろう。  先輩は困惑の表情を浮かべていた。そりゃそうなるよな。初対面の人にそんな超能力じみたことを言われたら、どう反応していいか困るに決まってる。僕だって他人からこんなことを言われたら反応に困る。陽キャとかなら「すげー」「ヤバ」なんて語彙力で対応できるのだろうけど、僕にはそんな能力はない。 「僕、なんです」  共感覚者、と先輩が反復する。するとピンと来たのか「聞いたことがある!」と言った。 「あれでしょ。文字に色が見えるとか、味に色を感じるとか」 「そうです」  僕の場合は人のオーラに色が見えるパターンだけど。 「私、赤色のオーラを持ってるんだね。赤色は分かんないのに。あ、赤城って苗字だからかな?」 「それは違うと思います」  先輩が首を傾げる。  多分、僕が先輩の名前を知らなくても先輩は赤色のオーラを持っているように見えたはずだ。名前とかでオーラの色が変わることはない。だから名前に青が入っていても赤色に見えたり、黄色に見えたりすることもあるということだ。 「オーラは人を表す。先輩は、あったかい人だから赤色に見えたんだと思います。赤は熱を表すので。情熱とかもそうです」  先輩は数秒黙り込むと「そっか」とはにかんだ。しばらく俯いて微笑んでいる。そんなに嬉しかったのかな、赤色のオーラを持っているって言われて。それともあったかい人って言われたからだろうか。
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