アカ

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 先輩が立ち止まる。振り返って、僕の方を見た。 「赤は明るいと鮮やかで、暗いと怖い色になります。明るい赤は情熱的で、暗い赤はネガティブなイメージがあります。お化け屋敷で見る血の色と似ているからだと思います。先輩のオーラは明るい赤。ポジティブで、元気で、情熱的な赤です。見ていると、こっちまで元気を貰えそうになったり、心があったかくなれる赤色です」  後は何がある? どうやって説明できる? くそ、こういう時に限って語彙力が乏しい。普段から色には敏感なはずなのに。本当に自分の語彙力の無さに情けなさを感じる。 「あの、すいません、こんな説明で。分からないですよね」 「まぁ、そうだね」  先輩が悪戯っぽく笑う。僕の横を通って自分の絵の前にやって来た。僕は自分の絵を愛おしそうに眺める先輩を凝視する。 「でも青山君のお陰で、赤色が素敵な色なんだってことが改めて分かったよ。いつか私の絵にも、赤を使ってみたい」  使えますよ、なんて言ったら無神経だろうか。でも他に何て返せばいいのだろう。 「……使えると思います」  結局、そんな無神経なことを言ってしまった。先輩がこっちを見るとニッと笑った。 「じゃあ頑張って勇気出さないとね」  多分、こういうポジティブな所が赤色のオーラに繋がってるんだろうな。 「ありがとうね、青山君。私、頑張るよ」  先輩がガッツポーズをする。 「あ、じゃあ僕はこれで。そろそろ戻らないと」 「ああ、見学だっけ? ごめんね、引き止めちゃって」 「いえ、お話しできて良かったです」 「うん、私も」  僕は先輩に会釈をすると、スタスタと廊下を歩く。片手に持った地図を頼りに、次の場所へ向かおうとした。 「青山君!」
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