極道なお義兄さまに淫紋を刻んだお嬢の愛は翼となって舞い降りる

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 そして生まれたのが紫翼なのだと説明しようとしたところで、紫雀がむくりと起き上がる。息子にまじまじと見つめられて、硬直している。紫翼の視線は、背中に刻まれた刺青に注がれていた。 「おっきな、とりしゃん」 「これな、鳳凰のつばさくんっていうんだ。さわってみるか?」 「うん!」  紫雀自身、雀座組の亡き会長と妾の息子であるため、当たり前のように墨を入れている。鳳凰が翼を拡げた絵柄に衝撃を受けたのか、紫翼は興味深そうにぺたぺたと背中を叩く。 「かっこいい!」 「だろ? つばさくんって名前は、子どものときのママがつけたんだぜ」 「ママが?」 「そうよ。紫翼が生まれる前のおはなし」 「そのころから、ふたりはにっしょだったの?」 「にっしょ? あ、一緒ってことか。そうだな、兄妹みたいな関係だった」 「いいなぁ、しよくんも弟か妹がほしいな」 「だってさ、ママ」 「――そこでさらりと話をふらないでくださいっ!」  たしかにはじめは兄と妹のような関係だった。それがいつしか恋人のようになり、子どもを授かった。羽鳥が一途に紫雀を慕っていたから。
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