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「いや仕方なくない! っていうかお前ひとりで企んだわけじゃねぇよな? 若頭が一枚噛んでるんだな?」
浮いた噂ひとつなく、羽鳥が成人してからも組織運営業務を本部長とともに行っている紫雀を組長や若頭は気に入っていた。気に入るあまり、組長は若頭の娘である羽鳥を紫雀と結婚させて組の基盤をさらに磐石なものにしようと考えているとも。羽鳥はそのことを知っていて、自分の身体に淫紋を刻ませたのだろう、いくら紫雀が逃げようとしてもけしてペアリングが外れないように。
「だって組長、お義兄さまをゆくゆくは若頭補佐にするつもりだって言ったのです。その前にデカい仕事をひとつこなさないといけない、って」
「羽鳥」
「とても名誉なことだって、パパは言っていたけど。戻るまで時間がかかるんでしょう? それ以前に戻れるかもわからないんでしょう? 返り討ちにあう可能性だってあるんでしょう? それなのに、お義兄さまはいかなきゃいけないのですか?」
「知ってたのかよ……まあ、上からの命令だからな。ついに俺にもお鉢がまわってきたってだけさ」
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