極道なお義兄さまに淫紋を刻んだお嬢の愛は翼となって舞い降りる

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「おなじですよ。あたいもパパに言われたの。お義兄さまと淫紋認証しろって……これは、命令でもあったんですから」  渡りに船だったんだけどね、とけろりと言い放つ羽鳥の前で、紫雀は困惑する。  羽鳥には言わないでおくつもりだった。けれど若頭がすでに伝えていたのだとすれば、彼女の行動にも納得したくはないが納得がいく。 「淫紋認証をするってのは、それだけの覚悟があってなのか」 「お義兄さまが戻ってくるまで貞操を守れって意味の方が強いと思うけど」 「わかってねぇだろ、鉄砲玉のこと」  鉄砲玉。鉄砲の弾丸を意味する言葉だが、極道の世界では一度行ったきりで戻ってこない人間やそれに準ずる役割を持った者のことをそう呼んでいる。  この雀座組は指天会系のなかでは規模がちいさいが、抗争時の機動力は組織随一と呼ばれている。戦闘狂が多いことから警察に厄介になることもしょっちゅうで、内部抗争が外に飛び火することもある。紫雀はその、飛び火してしまった外部組織の尻拭いに駆り出されることになったのだ。
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