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極道組織はよく家族に例えられる。
組長を父親、若頭を長男、若頭補佐を次男……というように。
紫雀は舎弟頭なので親分と呼ばれる上層部のなかでも若頭の弟分として彼らの子どもたちこと舎弟の面倒を見ていた。
若頭の娘だという羽鳥が紫雀のもとへ連れてこられたのは十年近く前のことだ。
「紫雀」
「はい、若頭……そちらのお嬢さんは?」
「俺の娘の羽鳥だ。母親が死んじまったから引き取ってきた。組で若くて信頼できる奴っていうとお前くらいしか思い浮かばん。しばらく面倒みてくれ」
少女は紫雀を見ても怯えることなく、むしろ興味津々といった体で瞳を輝かせている。若頭の姐さんは一般人ゆえにシングルで娘を育てていたが、病気で帰らぬ人となったという。「俺の方が早く死ぬと思ったんだけどナァ」と納得いかない表情で名字の異なる娘を引き取ったそうだ。母親の親族は父親が極道の人間であることを知らなかったようだが、父親を名乗る若頭のスーツ姿に恐れをなしたのか誰も羽鳥を引き取るとは言ってこなかった。
「お母さんがね、死んだらお父さんを頼りなさい……って」
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