1・答えられない想い

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 正直、その二つの点は関係ない。国籍とか年齢とか、そんなの全然気にしてないもの。別の理由があって、私はチョウさんとの関係を深くすることができない。  彼は仕事を真面目にこなし、何事にも一生懸命で、とても優しい性格の持ち主だ。一緒に過ごす時間は、私にとっても尊いもの。本音を言うと、私は彼に惹かれている。  でも……ううん、だからこそ、私は彼の想いに応えることができない。    私なんかが(・・・・・)チョウさんみたいに素敵な人と釣り合うわけがない。いや、それよりも私はもう誰とも付き合う資格すらないの。  だからこれからもずっと、チョウさんとは友人のままがいい。このときの私はそう思っていた。  チョウさんは涙目になりながらも、はっきりとした口調でこう言った。 「アナタは心の広い方だとワタシは知っている。ワタシの気持ちに嘘はない。だからムラオカさんも忘れないでほしい。いいですか?」 「……え、ああ……はい」  それってつまり、諦めないよって宣言……? 私なんかよりいい女の人、沢山いるんだから早く忘れた方がいいよ。  この日、芝公園から見える東京タワーだけは美しく輝き続けていた。 
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