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三人寄っても自己紹介すら忘れる。
一週間後の昼休み。学食でうどんを啜っていると恭子から電話が掛かって来た。
「なんじゃい」
「明日、暇?」
唐突な質問だ。明日は土曜日。予定は無し。
「暇」
「ちょっと付き合ってくれない? 一時に秋野葉駅へ来てくれる?」
「いいけど、何で?」
「大したことじゃない。葵は来てくれるだけでいい。この後バイトだから切るね」
おい、と呼び掛けるも既に通話は終わっていた。何なんだ全く。ぼやきながらスマホを仕舞う。一方で、まあいいけどさ、とも思った。私は恭子に甘い。惚れた弱みというやつだ。やれやれ。
翌日の昼一時。秋野葉駅の改札を抜ける。恭子は既に来ていた。傍らには意外な二人。先日、恭子とチェキを撮った少女と相方の男子がいた。
「お待たせ。何じゃこの面子は。帰っていいか」
率直な感想を述べる。すみません、と少女は勢い良く頭を下げた。
「いいのよ咲ちゃん。葵を呼んだのは私だから」
恭子の言葉に男子が頷く。
「恭子さんの気持ちもわかります。一人じゃ不安ですよね」
話が見えていないのは私だけらしい。おい、と腕組みをする。
「説明しろ。一体何が始まる」
「撮影会」
「あ?」
「歩きながら説明するわ」
「その前に自己紹介くらいしてくれんかね。私はお二人の名前も知らんのだよ」
あ、と三人揃って口を開ける。やっぱ帰っていいかな。しかし少女がまたも頭を下げた。頚椎を痛めそう。
「申し遅れました。田嶋咲といいます」
「田中です」
しれっと男子も乗っかる。私も口を開いた瞬間。
「こっちは山科葵。私の親友」
何故か恭子が紹介した。二人に名乗らせておいて自分は無言とは、気まずい。どうも、と居心地悪く会釈をした。
「で、撮影会? 何のだよ」
私の質問に、それはですね、と咲ちゃんが顔を輝かせた。
「恭子さんのメイド姿を撮らせていただきます」
なかなかの声量で答えてくれた。ほぉ、と私は彼女の頭を撫でる。
「いい趣味をしているな、咲ちゃんよ。よくわかってんじゃん」
一瞬きょとんしたけれど、はいっ、とすぐに笑顔を見せた。
「そのために私の自宅へお呼びしたのです。そうしたら、友達も同席して良いのなら、と仰ったので」
「私が呼ばれたわけだ。なるほどね」
やれやれ、と肩を竦める。行こうか、と田中君が歩き出した。そうだね、と咲ちゃんが続く。
「そのくらい事前に教えろよ」
恭子をつつくと顔を赤らめた。
「自分の撮影会だなんて恥ずかしくて言えないわよ」
「どんな乙女心だ。どうせバレるのに隠したってしょうがないだろ。わけもわからず呼び付けられた私の身にもなれ」
「でも葵なら何も言わなくても来てくれるってわかっていたから」
口籠る。礼を欠くなと説教を続けたかったが恭子からの信頼が嬉しくて思わずにやついた。まったく、我ながらチョロい。
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