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最強コンビの誕生。
翌日、一人で咲ちゃんのアパートを訪れた。ピンポンを鳴らすと扉が細く開けられた。中へ入る。手土産の冷凍揚げ餅を渡すと、こちらです、とリビングへ通してくれた。
明かりは点いていない。机に置かれたパソコンのモニターだけが輝いている。大量に取られた恭子のメイド姿が画面いっぱいに並んでいた。
「データはクラウドで葵さんに共有しました。さっきアップロードが完了したのでご確認下さい」
「わかった」
顔を見合わせるとお互い表情が緩んだ。昨日、コンビニへ行く時に取引を持ちかけた。好きなお菓子を何でも買ってあげるから恭子の写真を共有してくれ、と。彼女は数駅先のデパ地下に売られている冷凍の揚げ餅を所望した。そして、写真は数百枚に及ぶので明日もう一度来て欲しい、と告げた。だから今日、こうして一人で訪れた。写真を全て見たいのは当然だが、それ以上に私も恭子の写真集を作りたかった。数百枚にも及ぶ写真の中から珠玉の作品を選び纏める。その作業がどれほど幸福に満ちているか。そして本人には内緒で行うなんて背徳感に溢れている。
「冊子はお互い四冊刷りましょう。観賞用。保管用。そして」
「私と咲ちゃんで交換する用の二冊だな」
暗い部屋で笑い合う。
「ありがとう咲ちゃん。恭子のメイド姿を君が見初めてくれたおかげだ。しかも超能力でありとあらゆる場面を撮れるなんて、君は最高だ」
「いえいえ、私が楽しいので。その代わり次回の撮影もよろしくお願いします」
「任せとけ。きっと恭子は渋るだろう。だが絶対に私が説得してみせる。なにせ親友なんでね」
軽く拳を合わせる。こうして最強の対恭子撮影部隊が生まれた。
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