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「隊長?如何されました?」
常ならぬ私の様子に、訝しむように尋ねてくるヒギンスに無言で手紙を差し出す。
手紙を受け取り目を通すヒギンスの顔が、どんどん険しくなっている。
「サキ様?私も拝見させて頂いても?」
「うん。みんなも見て良いよ」
私とヒギンスの様子にただ事ではないと思ったのだろう。
スチュワートも見たいと言うので許可を出すついでに、どうせみんな気になってるだろうからと許可を出すと、その場にいた他の隊員達も一緒になって手紙を読んでいる。
「隊長、どうされるおつもりで?」
「せっかくのご招待だもん。お断りするなんて無礼な真似は出来ないよね?」
「ですが……」
ヒギンスが渋い顔をする。
そんな顔をする気持ちもわかるけどね。
手紙の差出人は四人を連れ去った犯人だった。
内容は、四人を無事に帰して欲しければ指定された場所まで私一人で来いというもの。
とてもありきたりな手紙だ。
「隊長、こんなの罠に決まってます!
隊長が行く必要なんてありません!」
「まぁ、十中八九そうだろうねぇ」
もちろん、罠だなんてことはわかってる。
これでも何年も近衛の部隊長をして来たんだ。
「そうです!必ず俺らが見つけてみせるっすから!
だから隊長はここでスチュワートさんとワナイ団長と一緒に指揮をとってください!」
「指揮なら二人に任せて大丈夫でしょ。
私まで必要ないよ」
隊員達の能力を疑ったことなんて一度もない。
言われるまでもなく、私が何もしなくても必ず四人の居場所を突き止めてくれると信じてもいる。
でも、それじゃあダメなんだ。
「隊長だってイシュレア王国にとって大切な方なんです。
ご自身の身の安全もお考えください」
「一応『流れ人』だもんね」
この国における自分の立場も重要性もわかってるつもりだ。
この立場のおかげで散々好き勝手に生きてきたわけだし。
「みんなの気持ちはわかるし、ありがたいと思うよ。
でも、行かないって選択肢はちょっとないかな。
申し訳ないけどね」
だって、犯人の狙いは私ってことでしょ?
それなら、あの四人はそれに巻き込まれたってことだ。
四人だけじゃない。
恐らくは犯人達に殺されたであろう騎士達だってそうだ。
もう犠牲者が出てしまった以上、やり返さないと私の気が済まない。
そして何より、もしもあの四人に何かあったら、その時私が何をしてしまうか。
それは自分でもわからない。
今でさえ、怒りに任せて暴れ出したい衝動を何とか抑えてるってのに。
「隊長のお気持ちもわかります!ですが……」
「あのさ」
なおも私を止めようとしてくる隊員達の言葉を遮り、押し殺していた怒りと殺意を解放する。
そんな私の姿は、まさに人々から恐れられている魔女そのものだろう。
隊員達や騎士達。そしてスチュワートは顔を青ざめさせながらも何とか耐えているけど、たまたま近くにいた辺境伯邸の使用人なんかは悲鳴をあげてへたり込んでいる。
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