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何も悪くない四人がこんな怖い想いをしなくちゃいけなくなって。 コーネリアは倒れたままピクリとも動かなくなっちゃって。 アンネは死ねない体になっちゃったせいで何度も剣で刺されることになっちゃって。 エミリーちゃんとニーナちゃんはあんなに辛そうに泣いている。 これも全部私のせいなんだ。 私みたいな化け物が、誰かと仲良くしようとしたのが間違ってたのかな。 すっかり平和な毎日に慣れてしまって、こんな穏やかな日々がずっと続けば良いと思ってしまったのがいけなかったのかな。 いつの間にかみんなのことが大好きになっていて、これからも一緒にいたいと思ってしまったことも駄目だったのかな。 ううん。きっと、全部が間違ってたんだろうな。 だから、こんなことになってしまったんだ。 いつだっけ。なんだかずっと前にも同じようなことがあった気がする。 たしか、あの時の私はまだ子どもで、それで目の前で……。 いや、違う。これは私の記憶じゃない。 これは「あの子」の……。 あぁそうか、わかった。 全部、全部思い出したよ。 もう耐えられないと思うほどに感じていた頭痛が、気が付いたら消えている。 そして、フタが完全に開いちゃったのもわかる。 思い出したのは、「私」がなんの為に生まれたのか、その理由。 私は「あの子」を守るために生まれたんだ。 それなのに、そのことすらずっと忘れてたから罰が当たった。 だから、また守れなかったんだ。 だったら、もういい。 いらないものは全部消してしまおう。 静かに周囲に視線を向ける。 狂ったように笑いながら剣を振り回している男。 うん、あれはいらない。 その足元に倒れている二人の女の子。 うん、あの子達は大事。助けよう。 その横で泣いている二人の女の子。 あの子達も大事。だからそのまま。 他にも男の仲間が森の中にいるらしいけど。 どこにいるかわからない。 だから、森もそいつらもいらない。 うん、これでいい。 そしてゆっくりと口を開いて言葉を発する。 「全部『消えて』」 次の瞬間、「私」がいらないと判断した全てのモノが消える。 あとに残ったのは、何もなくなった土地と、四人の女の子だけ。 「え?」 泣いていた女の子が、突然の出来事に驚いている。 だから「私」は、安心させてあげたくてゆっくりと近付いていった。 「あの……助かったんですか?私達……」 「うん、そうだよ」 「あの、アンネ様とコーネリア様は!」 「うん、その子達も、もう大丈夫。治したから」 「良かった……」 女の子達が安心している。うん、良かったね。 また笑ってくれるかな?そうだといいんだけど。 「じゃあ、これで全部終わったのでしょうか?」 「ううん、それはまだ」 「え……?」 「一番いらないモノがまだ残ってる」 一番いらないモノは「私」。 自分が生まれた理由すら忘れ、望んではいけないものを望んでしまった。 『そんなことない!』 だから、これも消さないといけない。 『貴女は消えなくていいの!』 そうすれば、きっともう誰も傷つかないし、泣かなくてすむ。 『ダメ!』 「あの……?」 不安そうにこっちを見ている女の子達を安心させてあげたくて、にこりと微笑む。 「これを消せばきっともう大丈夫。だから『私は消える』」 「え!?サキさん!?」 『待って!』 これでいいんだよ。 今、全部「貴女」に返すから。 空に目を向ければ、徐々に日が登ってる。 あぁ、夜が明けたんだ。 『返さなくていい!だからお願い!』 最期に見たものが、こんな綺麗な景色だなんて「私」はきっと幸せだったんだろうな。 『消えないで!サキ!!』 みんな、今までありがとう。 「さよなら」 そして「私」の意識は闇に包まれた。
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