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「私達にも何がなんだかさっぱりで……」 「はい、突然体が真っ白に光り始めて、それが消えたらこうなっていたんです」 「確かにこの服はサキの着ていたものに見えますけど……」 「髪色も同じですし、顔だって確かにサキさん面影があります。でも……」 うっすらと覚醒し始めた意識の中で、周囲の人々の声に耳を傾ける。 あぁ、そうなんだ。やっぱり……。 「失礼します。フューリー嬢とルーベック嬢が目を覚まされました」 「まぁ、それは何よりです。お二人の具合はどうですか?」 「はい、隊長が治療してくださっていたようで、すっかり……」 「「サキ様っ!!」」 「えー、はい、ご覧の通りです」 あぁ、良かった。あの子達は無事だったのね。 ねぇ、聞こえる? 「貴女」が助けたのよ? 「え?あの……サキ様は?」 「気になるのはわかりますが、貴女方も酷い怪我だったそうではないですか。 安静にしていなくて良いのですか?」 「わたくし達はもうどこも悪くありませんわ! それよりもサキ様は……」 ほら、みんな戸惑ってるよ? だから、そろそろ目を開けないとね。 上手く話せるかしら? 「私」はゆっくりと目を開く。 周囲に視線を向けると、みんなが「私」のことを不安そうな、戸惑ったような目で見ている。 「あの……サキ……なのですか?」 恐る恐るといった様子で聞いてくる金髪の女の子。 「私」が実際に目で見るのは初めてだけど、この世のものとは思えないような美少女って本当にそうね。 つまり、この子がエフィーリア様。 久しぶりに自分の意思で動かす身体はとても重く感じるけど、それでも何とか起き上がってみんなの方に顔を向ける。 「私」のことを見ているみんなの顔は、ひどく戸惑っているけど、それも仕方ないよね。 「私」自身も、まだ少し戸惑っているし。 でも、ここは「私」がしっかりしなきゃ。 「貴女」の大切な人達を安心させてあげないとね。 寝かされていたベッドから立ち上がろうとすると、まだ慣れないせいか、それとも消耗が激しいせいか、ふらついて倒れそうになってしまう。 「隊長!無理はしないでください……お願いですから」 そんな私を、赤髪の女性騎士、カレンさんが泣きそうな顔で支えてくれた。 そっか、まだ隊長って呼んでくれるんだね。 「ごめんなさい……それと、ありがとう」 いつもとは違う「私」の反応に困惑の表情を浮かべる彼女に、少し申し訳ないとは思いつつも、そのまま体を支えてもらってみんなの方へと向き直る。 「皆さん、初めまして」 「え……?」 何を言ってるのかわからないと言うふうに戸惑っているみんなへと、深々と頭を下げる。 そして、顔を上げると静かに、それでもはっきりとした口調で名乗る。 「私は、山村咲です」 第三部 辺境の魔女 ~完~
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