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「えっと……?」
私の挨拶に、みんながぽかんとしている。
あぁ、そっか。
同じ名前だもん、わからないよね。
うーーん、どう説明したら伝わるかなぁ。
「あの、サキ?体が成長したのですか?
それに、何故初めましてなのです?」
みんなを代表するようにエフィーリア様が聞いてくる。
でも、聞いているエフィーリア様自身も混乱しているみたいだし、他のみんなを見てみても同じように混乱しているのがよくわかる。
それが申し訳ないなって思うんだけど、私がそもそもまだ混乱してる部分があるのよね。
「あの、よろしいですか?」
そんな中、茶髪を三つ編みにした女の子がおずおすと手を挙げる。
えっと、この子はニーナちゃんだっけ。
「もし間違っていたらごめんなさい。
ただ、私は人の魔力を見るのが得意なので……」
「ニーナ?どうしたの?」
戸惑いながらも尋ねる、そばかすが可愛い女の子。
エミリーちゃんの方に視線を向けながら、ニーナちゃんが不安そうに口を開く。
「もしかしてなんですけど、今私達の目の前にいるサキさんは、私達が知っているサキさんとは別の方なのでしょうか?」
その言葉にドキリとする。
「え!?でもニーナも見てたでしょ?
サキさんが光ったら大きくなったの」
「うん、そうなんだけどね」
「ニーナさん、どういうことですか?」
エフィーリア様の質問に、ニーナちゃんは記憶を辿るようにしながら説明してくれる。
「えっと、皆さんもご存知だとは思うんですけど、人が持つ魔力はその魂に紐づいていると言われています」
ニーナちゃんの言葉にみんなが頷いている。
あ、みんな知ってることなのね。
サキは魔法のことはほとんど勉強してなかったからか、私の記憶にはないことだけどね。
「それで、魔力は人それぞれで固有の色のようなものがあって、私にはそれが見えるんです」
「まあ!そうなのですか!?」
エフィーリア様だけでなく、他のみんなも驚いている。
私には魔法のことは全然わからないけど、相当珍しいことなのかな?
「はい。私が特待生になれたのもその能力のおかげな部分が大きいですし。
それでですね、今ここにおられるサキさんの魔力なんですけど……」
あぁ、そういうことなのね。
だからニーナちゃんには私とサキの違いがわかるんだ。
「私達がよく知っているサキさんとは、魔力の色が違うんです。
いえ、その、全く違うというほどではないんです。
よく似てはいるんですけど、ほんの少しだけ違うというか……。
あの、もし私の勘違いなら本当にごめんなさい!」
申し訳なさそうにするニーナちゃんだけど、彼女の言うことは何も間違ってない。
現にヒマリちゃんは気が付いたみたいで「もしかして……」と呟いているのが聞こえた。
それを肯定するように、ヒマリちゃんへと視線を向けて私は頷く。
「私には魔力のことはわかりませんが、ニーナちゃんの言っていることが正解です」
間違いではないって認めたのに、ニーナちゃんは申し訳なさそうな顔で私を見ている。
そんな気にしなくていいのに。
本当に優しい子なのね。
大丈夫だよとニーナちゃんに微笑んで見せてから、私はみんなへと顔を向ける。
「皆さんの知っている「サキ」は、私の中にいたもう一人の私なのです。
私の中には山村咲である私と、皆さんのよく知る「サキ・ヤマムラ」の二人の人格が存在しているんです」
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