第四部 「サキ」と「咲」 1

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「えっと……?」 私の挨拶に、みんながぽかんとしている。 あぁ、そっか。 同じ名前だもん、わからないよね。 うーーん、どう説明したら伝わるかなぁ。 「あの、サキ?体が成長したのですか? それに、何故初めましてなのです?」 みんなを代表するようにエフィーリア様が聞いてくる。 でも、聞いているエフィーリア様自身も混乱しているみたいだし、他のみんなを見てみても同じように混乱しているのがよくわかる。 それが申し訳ないなって思うんだけど、私がそもそもまだ混乱してる部分があるのよね。 「あの、よろしいですか?」 そんな中、茶髪を三つ編みにした女の子がおずおすと手を挙げる。 えっと、この子はニーナちゃんだっけ。 「もし間違っていたらごめんなさい。 ただ、私は人の魔力を見るのが得意なので……」 「ニーナ?どうしたの?」 戸惑いながらも尋ねる、そばかすが可愛い女の子。 エミリーちゃんの方に視線を向けながら、ニーナちゃんが不安そうに口を開く。 「もしかしてなんですけど、今私達の目の前にいるサキさんは、私達が知っているサキさんとは別の方なのでしょうか?」 その言葉にドキリとする。 「え!?でもニーナも見てたでしょ? サキさんが光ったら大きくなったの」 「うん、そうなんだけどね」 「ニーナさん、どういうことですか?」 エフィーリア様の質問に、ニーナちゃんは記憶を辿るようにしながら説明してくれる。 「えっと、皆さんもご存知だとは思うんですけど、人が持つ魔力はその魂に紐づいていると言われています」 ニーナちゃんの言葉にみんなが頷いている。 あ、みんな知ってることなのね。 サキは魔法のことはほとんど勉強してなかったからか、私の記憶にはないことだけどね。 「それで、魔力は人それぞれで固有の色のようなものがあって、私にはそれが見えるんです」 「まあ!そうなのですか!?」 エフィーリア様だけでなく、他のみんなも驚いている。 私には魔法のことは全然わからないけど、相当珍しいことなのかな? 「はい。私が特待生になれたのもその能力のおかげな部分が大きいですし。 それでですね、今ここにおられるサキさんの魔力なんですけど……」 あぁ、そういうことなのね。 だからニーナちゃんには私とサキの違いがわかるんだ。 「私達がよく知っているサキさんとは、魔力の色が違うんです。 いえ、その、全く違うというほどではないんです。 よく似てはいるんですけど、ほんの少しだけ違うというか……。 あの、もし私の勘違いなら本当にごめんなさい!」 申し訳なさそうにするニーナちゃんだけど、彼女の言うことは何も間違ってない。 現にヒマリちゃんは気が付いたみたいで「もしかして……」と呟いているのが聞こえた。 それを肯定するように、ヒマリちゃんへと視線を向けて私は頷く。 「私には魔力のことはわかりませんが、ニーナちゃんの言っていることが正解です」 間違いではないって認めたのに、ニーナちゃんは申し訳なさそうな顔で私を見ている。 そんな気にしなくていいのに。 本当に優しい子なのね。 大丈夫だよとニーナちゃんに微笑んで見せてから、私はみんなへと顔を向ける。 「皆さんの知っている「サキ」は、私の中にいたもう一人の私なのです。 私の中には山村咲である私と、皆さんのよく知る「サキ・ヤマムラ」の二人の人格が存在しているんです」
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