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「二重人格……?」
私の言葉に、ヒマリちゃんが呆然と呟く。
でも、私自身自分が日本にいた頃は全く気付いてなかったけど、そういう事なんだと思う。
だって、よくよく考えてみると不可思議な点はいくつかある。
両親が亡くなってから数ヶ月間の記憶がないとかね。
「あの、二重人格とはなんなのでしょうか?」
どうやらこの世界では馴染みのない言葉みたい。
ヒマリちゃん以外のみんなが首を傾げている。
「そうですね……。どう説明すればいいでしょうか」
二重人格。
それは解離性同一症、または解離性同一性障害とも呼ばれるもので、かつては多重人格障害と呼ばれていた精神障害のこと。
複数の人格が同一人物の中にコントロールされた状態で交代して現れるものらしい。
私の場合はずっと知らなかったからコントロールされていたとは言えないかもしれないけど、通常なら容易に思い出せるはずの情報を思い出すことが出来ないという症状は身に覚えがありすぎる。
そう説明をしてはみたけど、やっぱりみんなには伝わってないみたい。
ますます首を傾げちゃってる。
「貴女の中に、わたくし達の知っているサキと貴女の人格が共存しているということは何となくですがわかりました。
一部の記憶がないということは、もしや貴女はこの世界に来てからの記憶がないのでしょうか?」
「いえ、それは大丈夫なのです。
全てを知っているわけではありませんが、ここ三年程の記憶はあるので」
「なるほど……」
今思い出してみても、あれは不思議な感覚だったと思う。
最初はまるで夢を見ているような感覚だった。
それが徐々に意識がはっきりとして来たのはいつからだろう。
サキが学園に入った頃からだろうか。
まるで映画でも見ているかのようにサキの日常を見ていた。
でも、そんな中でもサキの色々な感情も私へと流れ込んで来ていて。
だから私は……。
「お話中申し訳ごさいません。
お聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「ええ、私で答えられることであれば」
掛けられた声に誰だろうと思えば、それはアンネさんだった。
その横にはコーネリアさんもいる。
でも、サキの記憶の中ではいつも笑顔だったはずの二人は、泣きそうに顔を歪めている。
「サキ様は……。わたくし達がこれまで共に過ごして来たサキ様はどうなってしまうのでしょうか」
「それは……」
正直言って、サキがどうなってしまうのかは私にもわからない。
日本で暮らしていた頃のように、ずっと眠ったままになるのか。
それとも、最期にサキが願っていたようなことになるのか。
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