19人が本棚に入れています
本棚に追加
「今の時点では私にもなんとも言えません。
日本にいた頃はサキの存在を感じたこともなかったので……。
ただ、今は私の中にサキの存在を感じることが出来ています。
だから、彼女がまだ私の中にいることだけは間違いないんです」
私の胸の中。
いや、それよりも心の中と言った方がいいのかな。
そこにこれまで感じたことがなかった暖かい何かを感じることが出来る。
きっとそれがサキなんだと思う。
証明する方法も何もないんだけど、不思議と間違いないと確信出来るのよね。
「申し訳ございません!!」
そっと自分の胸に触れ、そこに確かに存在しているサキへと思いを馳せていた私に突然アンネさんが頭を下げる。
その横ではコーネリアさんも同じようにしている。
「全てわたくしの責任です。
必ずエミリー達を守るとサキ様にお約束していましたのに……」
「アンネだけの責任ではありません。
わたくしも同罪です。
本当にどうやってこの罪を償えば良いのか……」
頭を下げ、伏せられたままの二人の顔から水滴が床へと零れ落ちている。
しんと静まりかえってしまった室内に、二人の啜り泣く声だけが響いている。
「どうか頭を上げてください」
アンネさんとコーネリアさんの気持ちもわからなくはないけれど、サキはそんなことは望んでいなかった。
彼女の気持ちは、彼女の中にいた私こそが誰よりもわかるのだから、それを残された人々へと伝えることは、ずっとあの子に守られてきた私の役目だ。
「サキはお二人の明るい笑顔が何よりも大好きでした。
いえ、お二人だけではありません。
サキの大切に思っていた皆さんが、また笑顔になって日々を楽しく過ごせること。
彼女の望みは本当にそれだけなんです。
ですから、サキのことを思ってくださるのであれば、どうか無事に今を過ごせていることを笑って喜んでください。
彼女にはそれが一番嬉しいことですから」
「本当に隊長らしい望みですね……」
私の言葉にカレンさんが頷く。
アンネさんとコーネリアさんも何とか頭は上げてくれたけど、涙の滲むその瞳は伏せられたままだ。
ううん、二人だけじゃない。
この場にいる誰もが、悲しそうな顔をしている。
こんなのはサキの望んだ景色じゃない。
だからこそ、私にはやるべき事がある。
ぐっと口を結んで、皆さんの顔を見渡してから私は口を開く。
「私はまだ諦めていません」
私の言葉に、皆さんの視線がこちらへと向く。
「私は、何としてもサキを助けたいとおもっています。
ですから、どうか皆さんのお力を貸してはいただけないでしょうか?」
私はこの世界に来てからずっとサキに守られてきた。
ううん、この世界に来てからだけじゃない。
記憶のない子どもの頃。
きっとその時もサキが私を守ってくれていた。
だから、今度は私が彼女を助ける番だ。
その結果として、今の私がどうなろうとも、絶対に。
最初のコメントを投稿しよう!