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「あ、あの……」
「おかえりなさいませ」
部屋の外で護衛を続けると言うカレンさんを扉の外へと残し、緊張でドキドキしながら自室へと入った私を出迎えてくれたのは、これまでにサキの中から見ていたのと何も変わらない様子の二人だった。
ううん、そう判断するのはまだ早いかも。
だって二人とも元々は高位貴族の令嬢だし、今は立派な侍女なのだから。
表情くらいいくらでも取り繕えるはず。
「えっと、私は……」
「色々とお話になりたいことはありますでしょうが、それは一旦後回しですわ!」
自己紹介やらこれまでの経緯の説明をしなければと口を開きかけたところで、レイシアさんに遮られる。
「サキ様とお呼びしますね?どうぞこちらへお越しください」
有無を言わさない様子のレイシアさんに戸惑っていると、優しげな微笑みを浮かべたソフィアさんに手を取られ、部屋の奥へと連れていかれる。
「あ、あの?」
「急遽だったのでサキ様に合うサイズの服が用意出来ませんでした。
申し訳ありませんが、ひとまずはこちらでご勘弁願えますでしょうか?」
そう言ってソフィアさんが差し出してきたのは、ゆったりとした作りで肌触りも良さそうな部屋着。
そう言えば、色々と混乱していて全然気付いてなかったけど、私、いつの間にか白いワンピースに着替えてる。
サキがあの時に着ていたのは馬に乗ることやその後のことを考えて騎士の訓練服みたいなものだったのに。
視察に行くのにそういう服を持って来てるのがサキらしいと言うかなんと言うかだけど。
そんなことを考えている間にも、あれよあれよと着替えさせられ、気が付いたらベッドに寝かされている。
あれ?いつの間に?
一流の侍女の技はすごいな……ってそうじゃない。
「やはりサイズの合わない服ではいまいちですわね。
早急に仕立て屋を呼んでサキ様の新しい服を手配しなければなりませんわ。
スチュワート様に相談に行かなければ……」
「そうですね。元々のサキ様の服でも手直しすれば着られないことはないとは思うんですけど……」
「あらソフィア。そんなものは論外ですわ。
確かに身長だけでしたらまだ簡単な手直しで誤魔化せる範囲ではありますけど、ほらご覧なさい。
胸もとなんて絶対に合いませんわよ、これ」
あぁ、うん。
サキくらいの外見年齢の時はぺったんこだったからねぇ。
今は年相応な外見に戻ってるから、そのあたりも必然的にそれなりになってはいるけど。
って違うそうじゃない。
二人があまりにも当然のような顔をして平然としているからつい流されてしまったけど、今はのんびりと寝ている場合じゃなかった。
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