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「あの、少し話を……」 何度目になるかわからない私の呼び掛けに、やいのやいのと言い合っていた侍女二人が動きを止める。 二人はちらりと視線を交わすように目を合わせると、姿勢を正して私へと向き直ってくれた。 「それでは、『今の』サキ様とは初めましてになりますので改めてご挨拶させて頂きますわ。 わたくし、サキ様の専属侍女”筆頭”のレイシアと申します。 サキ様は以前のサキ様とも記憶を共有されているとのこと。 それでしたら、わたくしたちの元の身分やその他につきましては、ご存知だろうと思いますので割愛させて頂きますわ」 「同じく、サキ様の専属侍女を務めておりますソフィアと申します。 改めまして、よろしくお願い致します」 背筋をずっと伸ばした綺麗な姿勢で挨拶をすると綺麗なお辞儀を見せてくれるレイシアさんと、そんなレイシアさんに何か言いたそうな視線を一瞬向けてからソフィアさんも同じようにお辞儀をしてくれる。 確かサキの専属侍女の筆頭は王都のお屋敷にいるアーシャさんだったはずなんだけど……。 ソフィアさんの含みのある視線の意味ってそれだよね? 今は王都を離れてるから事情は違うのかもしれないけど。 あ、それよりも私も挨拶を返さないとね。 「こう言うのは少しおかしいかもしれませんが、初めまして。 山村咲といいます。 レイシアさん、ソフィアさん、改めてよろしくお願いしますね」 ベッドの上で体だけ起こした姿勢での挨拶はお行儀が悪い気はするけど、立ち上がろうとすると二人に止められてしまうのでそのまま挨拶をさせてもらう。 立つとまだ少しふらふらするのも事実だしね。 しかし、そんな体勢なりに精一杯丁寧に挨拶したつもりなんだけど、私の挨拶を受けた二人は微妙な顔をしている。 あれ?何かおかしかったかな? 私の表情からその気持ちが伝わったのか、ソフィアさんがこちらを気遣うようにしながら口を開く。 「サキ様、私ども相手にご丁寧な挨拶痛み入ります。 ですが、私たちはサキ様にお仕えする身です。 どうか、私やレイシアのことはそのままソフィア、レイシアとお呼びください」 あ、そうか。 そう言えばこの二人はサキが直接雇用してる形になるんだもんね。 それだとこの世界の文化的にも「さん」付けで呼ぶのはおかしいのね。 「ええ、是非レイシアとお呼びください。 正直申し上げますと、多少見目が変わろうともサキ様はサキ様ですから。 今更「さん」などと呼ばれますと、何だか体がむず痒くなってしまいますわ」 苦笑いしながらレイシアさんがそんなことを言うので、私までつられてつい笑ってしまう。 正直どうなるかすごく不安だったけど、この二人も今の私を受け入れてくれるみたいだ。 きっとこれも、サキがこれまでに築いてきた関係性が良かったからなんだろうなと思う。 だからこそ、私はこの人たちのため、そしサキのために出来ることをしなければ。
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