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魔法?サキが?
でもあれ?
確か異世界人である『流れ人』は魔法が使えないはずだよね?
魔力こそあるものの、体が魔法を行使出来る構造になっていないからっていう理由で。
サキも私と同じように思ったのか、ナターニャ先生を疑うように見ている。
「おい、サキ。それにフローリアもか。
お前ら、私が嘘ついてると思ってるだろ?」
「そりゃそうですよ。
体の構造的に無理ってずっと言われてたんですから」
不本意だと言いたそうなナターニャ先生に対し、サキはジト目を向けたままだ。
でも、当のナターニャ先生はその言葉にニヤリとする。
失礼だとは思うけど、こういう顔をすると本当に悪いこと考えてる人に見えちゃうんだよね、先生って。
「そうだ。これまでは確かに体の構造上の問題で無理だった。
だけどな、サキ。
今のお前の体は?異世界人のものか?」
「あ……」
先生の言葉にサキが小さく声をあげる。
それと同時に私も気が付いた。
そうだ。サキの体はホムンクルスの素体を使ったものだから……。
「もしかして、この身体はこの世界の人間の身体の構造になってる?」
私の言いたいことをサキが代弁してくれる。
さすが私の半身。
「そう言うことだ。
そもそも考えてもみろ。
いくら私でも『流れ人』の身体の構造は詳しくは知らないからな。
人体を再現しようとしたら、必然的にこっちの人のものになるだろ?」
確かに先生の言う通りだ。
そもそも『流れ人』や『招き人』は人数が少ない上に、以前イシュレア王国に来たのは100年以上前だって話だもんね。
私はホムンクルスのことはさっぱりだけど、今のサキを見ている限り普通の人間と何も変わらなく見える。
それだけの精度で再現しようと思ったら、人体の構造についてかなりの知識が必要になりそうだもんなぁ。
そのための知識を先生がどうやって得たのかは知らないけど、この世界の人間の体の知識になるよね。
「そんなわけで、この世界の人間ベースに作ってみたんだが。
もしやとは思っていたが、今見た感じだと問題なく魔法を発動出来るだろうな」
「私が魔法を……」
信じられないといった様子で自分の手を見詰めるサキ。
そうだよねぇ。説明されて理由は納得出来ても、気持ちが追い付かないよね。
「それでどうする?
お前は魔力量だけならこの国でもトップレベルだ。
興味があるなら、私が見てやるが?」
「先生が?」
まだどこか呆然とした感じのサキに対し、ナターニャ先生はとても楽しそうにしている。
「そうだ。
サキはほとんど見学してただけだから忘れてるかもしれないけどな。
私の担当教科は魔法実技だぞ?」
そう言えばそうだった!
学園にいた時、魔法が使えないのに、エフィーリア様に付き添う形で魔法実技を選択してたんだよね。
だから授業はずっと見学だったから、サキは隅っこでぼーっとしたり居眠りしたりして過ごしてたもんね。
「でも……」
そう言うと、サキがちらりと私に視線を送って来る。
ん?もしかして、私は魔法が使えないままなのを気にしてたりする?
全くもう、優しいんだから。
「私のことなら気にしなくていいよ?
サキが魔法を習ってる間、私は領地経営とかの勉強してるから」
本当はサキも巻き込もうかなって思ってたんだけどね、仕方ない。
それに、これは私の役目でもあるし。一人でも頑張らないと。
「わたくしのマナーレッスンもお忘れなく」
「え、あ、はい……」
しれっとレイシア先生からの指摘が入ってしまった。
めっちゃ厳しいんだよな、レイシア……。
ソフィアに代わって欲しいところなんだけど、領地経営の方の先生だもんなぁ、ソフィア。
「それじゃあ、先生。お願い出来ますか?」
どうやら、サキも魔法を習うことにしてくれたみたい。
だって、私のことを気にしながらも魔法に興味があって仕方ないって顔してたもんね。
それにね。
魔法のことだけじゃなくて、サキにはやりたいことは何でもやって欲しいんだよ。
せっかく新しい身体を手に入れたんだから。
「任せておけ。今度は居眠りしてる暇なんてないと思っておけよ」
あ、授業を見学しないで寝てたのはばれてたみたいね。
それには「気を付けます」と答えながらも、サキはとても楽しそうにしていた。
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