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そして、サキが目を覚ましてからあっという間に一ヶ月が過ぎた。 この一ヶ月の私達はと言うと、サキは朝から昼にかけてはお屋敷で体を慣らすためにみんなの訓練に軽めではあるけど参加して過ごし、夕方近くからは連日のように魔法を習うために王城へ行き夜に帰ってくるという生活をしている。 と言うのも、ナターニャ先生は昼間は学園で教師をしているから。 どうしてもそれが終わってからになっちゃうんだよね。 それならと、いっその事サキも学園に復学したらいいんじゃないかっていう提案がエフィーリア様からされたんだ。 私としても、サキは三ヶ月しか通えなかったけど学園生活を楽しんでいたから良いんじゃないかと思ったんだけど、サキ本人が頷かなかった。 復学そのものには心惹かれてたように見えたんだけどなぁ?なんでだろ。 一方の私はと言うと、朝からお昼まではレイシアによるマナー講座。 そして、お昼から夕方にかけてはソフィアとセバスチャンから領地経営について学んでいる。 それで、毎日ではないけどサキが王城へ行く時に一緒に付いて行って社交の練習として王妃殿下とお茶会を頻繁にしている。 週末はそこにエフィーリア様やヒマリちゃんも加わったりね。 他には、これまた社交の練習として学園のみんなやラシール姉妹をお客様としてお茶会の主催をしてみたり。 ちなみに、そのラシール姉妹だけど、サキは無事に新しい身体を手に入れられたから帰国しちゃうのかなとも思ったけど、少なくとも私のお披露目まではいてくれることになったよ。 もちろん、二人の祖国での立場もあるからずっとここにいられないのはわかってるけど、すごく仲良くなれたし帰国しちゃったら簡単には会えなくなる。 やっぱりそれは寂しいからね。少しほっとした。 まぁ、そんなこんなで忙しいけど充実した日々を過ごしています。 サキも魔法を覚えるのが楽しくて仕方ないみたいで、毎日すごく機嫌が良いしね! ナターニャ先生から聞いたんだけど、サキはめちゃくちゃ才能があるみたいで、どんどん新しい魔法を覚えてるらしい。 サキが言うには、魔法はイメージが大事らしくてそれに日本で見て来た漫画とかアニメとかがかなり役に立ってるみたい。 だから、魔力の扱いのコツさえ掴めば簡単なんだとか。 そう言いながら楽しそうに火や水を出してみせてくれたけど、ちょっと羨ましく思えちゃったのはここだけの話ね。 そして今日。 これからサキと一緒に王城へと行くことになってる。 「ねぇ、私はやっぱり普通の服でいいんだけど?」 準備を済ませてお屋敷のエントランスホールに集まってるのに、サキが未だに文句を言ってる。 「まぁサキ様。せっかくお似合いですのに」 「本当ですわ。とても美しいですよ?」 それを楽しそうに見ているのはミリアとカリナ。 二人は一緒には行かないけど、見送りに来てくれてるんだよね。 「いや、二人がそう言ってくれるのは嬉しいけど……」 そしてサキが文句を言ってる理由ね。 それはドレスを着させられているから。 だってよ? 叙爵のために登城するんだから、ドレス以外有り得ないってレイシアだけじゃなくてソフィアやアーシャまで言うんだもん。 だから、私も泣く泣くドレスを着てるのね? それなのに、サキだけちょっと誂えのいいワンピースで行くなんて許せる訳ないでしょ? 私としては、ドレスそのものは嫌いじゃないんだけどね。 すごく綺麗だから、そういうのを着られるのは正直嬉しいから。 だけどね、コルセットがね……。もう地獄だよこれ。拷問だよね絶対。 まぁ、それで一人でそんな思いするのは悔しいからサキを巻き込んだ訳だけどね。 「ちょっとフローリア。何をニヤニヤしてんのさ」 「え?サキが可愛いなって思ってただけだよ?」 どうやら感情が顔に出てしまっていたみたい。 表情を取り繕う練習もしてるんだけど、気を抜くとすぐに出ちゃうんだよね。 「まぁいいけど」 ジト目でこっちを見てくるあたり、たぶんサキには思ってることもバレてそうだけどね。 そこは気にしない! 「よし!それじゃ行こうか!」 私とサキ。そして今日も付き添ってくれるソフィアとレイシアで馬車に乗り込む。 特別要人警護隊のみんなも護衛として来てくれる。 お屋敷のみんなとラシール姉妹に見送られ、私達は一路王城へと向かった。
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