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そして、相も変わらず王城へは一瞬で着くんだよね。 「もうこれ、馬車要らなくない?」 私も思っていたことをサキが口にする。 確かにね、数分だもんね。 「では、ドレス姿でずっと歩かれるおつもりですか?」 「いや、それはちょっと……」 そしてレイシアからの鋭い指摘を受ける。 もうお約束みたいなもんだよね。 そんなやり取りをしつつ、もはやお馴染みになりつつある裏口(たぶん違うけど、正式な名前は知らないから勝手にそう呼んでるんだよね!)から入ると、国王陛下の執務室を目指して移動。 いつも思うんだけど、入るところは王族のプライベートスペースに繋がってるからあまり人がいないのはわかるんだけど、執務室の周りにも人がいないんだよね。 たぶんわざわざ人払いしてくれてるんだろうけど……。 陛下の執務室があるんだから、お仕事で用事がある人もいそうなのにね。 何だか申し訳なくなるけど、これもお披露目までの辛抱かな? そして、これまたすっかり見慣れてしまった重厚な扉をノックすれば、中からは入室を許可する陛下の声。 「来たな。頭を上げてくれ」 中へと入り、カーテシーをして頭を下げていると陛下から声が掛かる。 頭を上げながらチラリと隣を見れば、サキもきちんと頭を下げてたみたい。 もしかしたら下げないでそのまま立ってたんじゃないかなって思ったんだけどね。 「ほほう、随分と様になってきたじゃないか」 「ありがとうございます!厳しい先生が付いてますので」 やったね。陛下に褒められたよ! レイシアの厳しい指導に心で涙を流しながら耐えた甲斐があった! 私の返事に何を思ったのか。 陛下は楽しそうに笑っている。 その横では宰相様が相変わらずの無表情で立ってるけど。 サキが表情豊かになった今、この人がイシュレア王国で一番の無表情キャラなんじゃないかな? 「何か?」 「あ、いえ!何でもありません!」 私がじっと見ていたからか、宰相様が首を傾げてる。 まぁ、それでも無表情なんだけどね。 「さて、今日が返事をもらう期限となっている訳だが……。 その立ち振る舞いが答えと思っても良いか?」 返事って言うのは、もちろん爵位をもらうことへの返事だよね。 そのつもりで王城まで来たんだし。 そして、二ヶ月前には覚束なったカーテシーやらを必死になって身に付けたというのが、どういう意味を持つのか陛下にはお見通しって訳ね。 「はい、陛下。セクメト伯爵の爵位。 謹んでお受け致します」 「そうかそうか。受けてくれると思っていたぞ」 頭を下げながら答えた私に、陛下は満足そうな笑顔を見せてくれる。 正直に言うと、まだまだ貴族。それも領主になることへの心構えなんて出来てない。 立ち振る舞いだって、少しはマシになったかもしれないけど、生まれついての貴族達とじゃ比べ物にならないレベルだってわかってる。 だけどね、全部を私一人で背負わなくても良いって言ってくれた人達がいるから。 それに……。 「では、サキもセクメト伯爵家に入るということで良いんだな?」 「まぁ、そうですね。 フローリア一人に苦労させる訳にもいかないし、良いですよ」 こうしてサキも一緒になってセクメト伯爵家を背負ってくれるって言うから。 それなら、頑張ってみようって思ったんだ。
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