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「お嬢様、おはようございます」
「……ん。まだ眠い……」
陽の光が差し込む中、まだ起きたくないと布団を頭から被ろうとするのに、何故かピクリとも動かない。
化け物みたいな特殊能力こそあれ、私の身体能力自体は一般人なのだ。
「アーシャ……離して……。死にたいの?」
布団を押さえ付け、今にも引っペがそうとしている侍女を軽く睨みながら脅す。
「まあまあ、お嬢様はそんなことなさいませんよ」
王城で会う貴族達なら悲鳴をあげて逃げ出すだろう私の脅しも、この侍女には通じない。
確かに実際に殺す気は全くないんだけど。
「ほら、今日は新しい子が来るのですから。
お嬢様は早く起きて仕度をなさいませんと」
「あぁ……そう言えばそうだっけ」
アーシャの言葉に今日の予定を思い出し、まだ眠い目を擦りながら体を起こす。
そのまま用意してくれた水桶で顔を洗うと、アーシャに促されるままに鏡の前に座る。
「もう間もなく朝食の用意も出来ますから、その前に身支度を整えてしまいましょうね」
「今日はどうしようかしら?お嬢様は何を着てもお可愛らしいですからね!」と楽しそうにしているアーシャを鏡越しにチラリと見て、内心ため息を吐く。
私はもう23歳なんだけど、この屋敷を陛下から貰った二年前からずっと身の回りの世話をしてくれているこの侍女は、私をいつまでも子供扱いする。
子供扱いするなと言いたいんだけど、それも仕方ないかと鏡に写る自分の姿を見て諦める。
そこに写るのは、まだ寝癖の残る黒髪を無造作に垂らし、眠そうな黒い瞳をしている13歳くらいにしか見えない少女の姿だった。
どんな理屈でこうなったのかはさっぱりわからないけど、この世界に来たらこうなっていた。
川で水を飲もうとして、水面に写る自分の姿を見た時はそれは驚いたもんだ。
何となく、体が小さくなっているような違和感は最初からあったんだけど、そこまで気にしてる余裕もなかったからね、あの時は。
そして、あれから三年過ぎた今も体は全く成長する気配がない。
『流れ人』はみんなこうなのかと思って陛下や宰相に聞いてみたけど、そんな記録は残ってないらしい。
一応実年齢は伝えてあるんだけど、王妃様がやたらとお菓子をくれるのも私の年齢が本当は見た目のままだと思っているからなのかもしれない。
まぁ、お菓子美味しいからいいんだけど。
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