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「冷てー!なんだよオマエら、寄ってたかって!」
「ごめんねナツカミちゃん、でも」
ハルカミさんの後を引き取り、アキカミさんが厳しく睨みつけました。
「怒りたいのはこっちよナツカミ!あっついの、毎日毎日!いつまで続くのこれ!」
「あ?」
「私が春の花をまき始めたらすぐ、気温が夏日越えちゃうし」
「九月になっても十月になっても真夏日だし。どういうつもりよ、アンタばっかり、ハルカミと私の出番ないじゃないの!」
クレームの矢が止まりません。
「うるせえな、もう」
「!」
ピカリと光る稲妻が三人をひるませ、どんがらがっしゃん、雷鳴が轟くと、氷の戒めは跡形もなくほどけてしまいました。
「ぼくの聖なるロックが・・・」
フユカミさん、悔しそうです。旬だけに、今一番強力なのはナツカミさんで、本来の力が出せていないのです。
「暑すぎる・・・」
その一言に尽きますね。
「そうよ」
ハルカミさんがやさしく、フユカミさんの肩に触れました。
「その毛皮の帽子とコート、脱いだら?」
「いや、そういうわけにはいかない。ぼくのトレードマークだから」
激しく首を振るフユカミさんの周りにはきらりきらりと粒が光ります。
「あら、出る汗出る汗凍ってる。さすがフユカミちゃん」
「待ちなさい、話終わってないわよナツカミ!イナズマボトルも返してよ」
「レモネードお代わりないのか?仕方ないだろ、偏西風がひねくれて蛇行しやがるし、高気圧も居座って動かねんだもん」
「それをちゃんとさせるのがアンタの仕事じゃないの」
「任せた」
「は?」
「オレ自身、この暑さにはもう耐えられない・・・。暑くて目が覚めちまって、今月も、先月も、ずっとよく眠れてないんだ。オレんち、エアコン、なく・・・て・・・」
「ナツカミ!」
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