8人が本棚に入れています
本棚に追加
「ほいほい、そこまでじゃ」
ひょいと天カミさまが、開いた右手を上げて、閉じました。
「あらま」
「ちょっと」
それだけの動きで、三人の渾身の一撃はきれいさっぱり消されてしまいました。
「天カミちゃんて、やっぱりすごいのね」
「ほんと。エロじじいのくせに」
「わしはただのじじいでも、ただのエロじじいでもないんじゃ」
鼻高々の天カミさま。デキるエロじじいとして、采配をふるいます。
「ナツカミ。偏西風にコース修正の指示をしておいで。メールはだめじゃ、やつは既読スルーするからな。直接お行き。高気圧にはわしから言うとく。ほれ、アキカミ」
天カミさまが人差し指を一振りすると、アキカミさんの両手にバトンが渡りました。
「ええな」
「ハイ」
握って八の字を描くようにくるくると回します。雲の下で、夕暮れのオレンジ色がひときわ濃く広がり地上を覆いました。
「大丈夫?」
ハルカミさんが、ぽかんと大の字に立ったままのアラシさんの両腕をおろしてあげました。
「えらいわ、あなた。会ったばかりのナツカミちゃんをかばうなんて。夏はまた来るから。来年は、一緒に夏祭り楽しんでね」
てっきり、愛の力です!と永久不滅の夏の輝きを見せつけられるかと思ったのですが、アラシさんはあらぬ方向へ視線を向けたまま、たたずんでいます。上の空の様子に、ハルカミさんは首を傾げました。心なしか、肌の色も全体的に白くなったように見えます。夏の熱が失われたのでしょうか。
「アラシちゃん?」
もう一度声をかけると、吹っ切れたような清々しい笑顔が返ってきました。
「私。仕事に生きます」
「え」
「天カミさま、挨拶周り続けましょ」
「そうかそうか、わしにゾッコンか」
天カミさまは、アラシさんが腕を組んでくれると信じて待ち構えていたのですが、眼中になく颯爽と前後に振られたアラシさんの肘は、高々伸びた鼻をへし折ったのでした。
「む!これが、褒美ということか・・・」
どうやら、デキるエロじじいにも飽き足りず、M寄りのデキるエロじじいとして人の記憶に残ることになりそうですね。要素盛りすぎてないといいんですけど。
最初のコメントを投稿しよう!