2.高校入学

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 そして2年が経ち、あと半年で卒業する頃。  小学生の頃から学校には1番乗りで行くのが好きだった。  誰もいない静かな教室で、ゆっくりと本を読むのが好きだった。  その日もそうするはずだった。  いつものように教室に入り、自分の机に向かって歩いてると、何やら様子がいつもと違うことに気づいた。  机に近づくにつれ、心臓は早鐘を打ち、目からは涙があふれる。  頭のどこかでは理解しているが、まだ状況を呑み込めず、呆然としながらそれを見た。 「何、これ・・・」  机一面に大きく「死ね」と彫られ、その周りは青や黄色、ピンクのチョークでびっしりといたずら書きをされていた。  椅子に座り、少しづつ状況が理解できるようになると、悔しくて机に突っ伏し泣いていると、少しづつクラスメイトが登校してきたが、誰一人声をかけるでもなく、遠巻きに見てコソコソと話しているだけだった。  普段、負けん気の強い私も、さすがに今回はダメージが大きい。  私の席は真ん中の列の一番後ろで、担任からも机が見えずらい位置にいた。  HRのために教室に来た担任も、やはり気づかず教室を出ようとしていたので、慌てて担任の前に行き、 「先生・・・いや、なんでもない」  強気な私はそれ以上、何も言えなくなってしまい、踵を返し自席に戻ろうとするが、いつもと様子が違うわたしに異変を感じたのか、 「おい、どうした?」 と席まで追いかけてくる。  机を見た彼は 「なんだ、どうしたんだこれ!!」 聞かれても、答えることが恥ずかしく、何も言えずにいた。 「玲奈、今日は授業出なくていいぞ。こんなクラスと授業はしなくていい。 先生と一緒においで。机は変えとくから」  2年から担任になり、生徒を受け持つのが初めてという新米先生だったが、実は彼とはしょっちゅうぶつかっていた。  何が原因か分からないが、しょっちゅう担任に目をつけられ、ことあるごとに怒られ、いつも怒鳴りあうほどの喧嘩をしていた。  そして、担任に連れられ視聴覚室へ行った。 「今日は授業はいいから、ここで休めよ。他の先生には伝えとくからさ。」 「なんだか逃げたみたいだね、あたし」 「お前はいつもそうやって自分を追い込むな。時には逃げることも必要だぞ。誰も寄せ付けない、寄るな触るなってオーラは損させてるぞ。」 そう笑いながら話してくれた。 「お前は2年生からの付き合いだが、よくケンカしたなぁ。この生意気な小娘がって思っていたが、なんだかんだお前が一番大人になったな。目がやさしくなったよ。」 「俺はお前が心配でずっと見てきた。危なっかしくて、何をするか分からないと思ってたし、服装検査も「これがあたしの制服だ!文句があるなら抜き打ちじゃなくて、毎日校門でやれ!!」なんて食って掛かってきたこともあったしな。腹が立つほど口が達者だったな。」 とにかくいろんな思い出話をした。  ほとんどが喧嘩した話だったが。  途中、授業があると担任は教室へ戻り、私は一人で犯人を推理し始めた。  教室は誰でも入ることができる。  普通科の子でも入ることができる。  そうなると全く想像がつかない。  ただ普通科にいじめられる意味がない。  確かに一人だけ中学から一緒に高校に上がってきたが、この子は人に興味がなく、自分に害がなければ何もしない子であったため、この子がやるとは思えない。  なので、普通科は消える。  では商業科はどうだろう。  思い当たりすぎて分からない。  自分のクラス全員、隣のクラスの4人組。  でも4人組は前回のことがあるし、それを言われたら困るみたいだからやらないだろう・・・。 ということは・・・。 やっぱり犯人は自分のクラスの誰か・・・。
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