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6
目を開けると真っ白の天井。
頭が少し痛い。
いや、頭だけじゃない。
身体のあちこちが痛い。
また骨折でもしたんだろうか。
ぼーっとしてると看護師さんが来てバタバタと慌ただしい音がした。
そういえば俺は車に乗ってたんだっけ?
「廉!」
なんだ?彼の声がする。
まだ夢の中か何かなのか?
でもその声はずっと聞こえてくる。
けどなんだかまだ眠たくて俺はまた目を閉じた。
そして次に目が覚めると誰かに手を握られていた。
見覚えのあるつむじが近くにあった。
「諏訪。」
そう呼ぶとのそっと動いて俺の目を見た。
その瞬間彼の目から涙が溢れた。
「よかった。」
「...なんでいんの?」
「なんでって、会いたかったからだよ。」
「...自分から消えたくせに。」
「それを言われたらなにも言えなくなる。」
「...だよな。来てくれてありがとう。」
「死ぬかと、思った。」
「死なないよ。」
「違うよ、俺が死ぬかと思った。心臓止まりそうだった。」
俺は彼の心臓に手を当てた。
「止まってなくてよかった。」
「...廉、愛してる。」
彼は唐突にそう言うと俺に抱きついてきた。
何を勝手なことを...そう思うより先に、俺は彼を許してしまっていた。
彼から父親に会った話を聞いた。
訥々と話す横顔をずっと見ていた。
退院して1ヶ月経った頃、彼はうちにやってきた。
「しばらくは遠距離だな。」
と神戸土産を広げながら言った。
「遠距離って俺たち付き合ってるの?」
と意地悪に聞くと、
「なに、それ仕返し?廉て結構根に持つタイプなんだね。」
と笑われた。
こいつは思ったより図太い。
そして俺なんかより強い。
「俺が強くなったのは廉のおかげだからね。」
「え?」
「好きな人に嫌いだって言われたら誰だって強くなるよ。」
「あぁ、そんなこと言ったっけ?お前こそ根に持つタイプだな。」
「俺は根に持つよ。覚えといてね。じっくり仕返しするから。」
「出会った頃はもっと可愛かったのに。」
「猫被ってたからね。もうそんな必要ないから。」
「魔法もな。」
「ちょっとぐらい使えてたいけど。」
「使わなくてもお前の思いどおりだよ俺は。」
「そうでもないけど?...でも、いいんだよ。思いどおりにならない方が楽しいから。」
彼に見つめられると俺は離れられなくなる。
でも...悪くない。
だってどうしようもなくその目に引き寄せられてしまうから。
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