晩夏

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神山町石の手という、関西寄りの山間部に位置する場所に小さな集落がある。 300人程の小さな集落の住人は、よそ者を受け入れず、肩を寄せ合い生きてきた。 そんなだから、高齢者が村の半分以上を占めるという状況になっている。 学校も、この集落を抜けて車で2時間ほど山を降りた所にある為、美羽は父に毎日送迎して貰うしかない。 その村に、子供は美羽だけだ。しかも14歳になったばかり。 (自分しかやる人おらんやん。最悪) 学校でもその村の住人と言うだけで、美羽はよく虐めにあっていた。友達も一人もいない。 特に、保護者から「忌み子やわ」と、正面から吐き捨てるようにそう言われた事もあった。 なんで、そう忌み嫌われるのかーー 自分は何もしてないのにーー ただ山奥に住んでるだけやんーー じつは毎日が憂鬱なのだが、両親には言えずにいる。 火祭り当日、美羽は、白装束を着て両親と宮司に連れられ浅間神社の奥の間に初めて足を踏み入れる。 舞の練習は一切していない。 (お父さんもお母さんも、ちゃんと宮司さんに踊りなんかできんって言ってあるんやろか) 奥の間は、神社の境内とは違い、こじんまりとしており、窓もなく、ドアを閉めると真っ暗になる。 中央には太い幹があり、しめ縄がかかっている。 宮司は、四方に立ててあるロウソクに火を灯して、美羽を中央の太い幹まで誘導する。 両親はそのまま扉を閉めて、出て行ってしまった。 「美羽ちゃん、この御身柱様の所に来てくれるか?」 美羽が御身柱様と呼ばれる太い幹に近づくと、急に宮司が美羽を押し倒す。 美羽は何が起こっているのか分からないでいた。 その時、外から太鼓やお囃子の音が聞こえはじめた。 宮司は、美羽を羽交い締めにし、白装束を剥ぎ取りる。 「やめて!!」 宮司の腕を解こうとしても、解けない。 美羽は抵抗し続けるが、成人男性の力に及ばない。 「やだ!やめて!」 「美羽ちゃん、これを拒めばご両親死ぬで?ええん?」 美羽は、え?と、宮司を見上げる。 「この交わり祭は、100年に一度の秘祭や。それを今まで1度たりとも失敗してないと言われてる。もし、失敗したら、、、両親もやけど、美羽ちゃんも死んでもらわんといかん」 「なんで?そんなん、、、」 美羽は、ただ力抜け絶望する。 それを感じた宮司は、卑しく笑い、美羽を恥ずかしめていった。
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