晩夏

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あいのは、その無惨さを目の当たりにし、絶望する。 鬼の手をそっと持ち上げ、自分のお腹に大事に当てる。 「あんたの子がここにおるで」 ただ、ただ、涙を流すことしかできなかった。 その傷心するあいのを見兼ねて、当時の宮司が浅間神社の別院に鬼の手を丁重に祀ってくれた。 そして、そこは禁域とし、村人が立ち入らないようにしたのだ。 月日が経ち、あいのは村から離れた場所で、密かに鬼との子供を産む。 見た目は人間で、鬼になる事は無さそうだと、安堵し村に戻る。 ただ、行き倒れた子供を拾ってきたと言って、一人でその子供を育てた。 だが、年齢を重ねる事に、その鬼に顔が似てきた事で村人はあいのと子供を村八分にする。宮司は2人を気の毒に思い、浅間神社の奥の間に住まわせた。 鬼の子供を出産したと言うこともあるのか、あいのは日に日に弱っていき、子供が15歳になる頃に静かに息を引き取った。 それに呼応するかのように、子供も息を引き取った。 宮司は村人に見つからないように奥の間の床下に2人を弔った。
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