晩夏

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「美羽、お前が選ばれたで」 いつもの様に、家族3人で夕食を囲んでいた時だった。 父が、なんの脈略もなく、そんな奇妙な事を言う物だから、美羽は眉間に皺を寄せる。 「は?何に?」 父は食事を口に運びながら、淡々と説明する。 「100年振りに浅間神社で火祭りが開催されるんや。そん時に、浅間神社の奥の間で、14歳の女の子が交わりの舞を踊るんや」 「そんなん知らんし。ていうか、私踊りなんか出来んで?お父さんも知ってるやん」 父は、美羽をチラッと見て、確かにそうやったなぁと思い出し笑いをする。 「確かに、今年の体育祭の学年別の踊りは、酷かったな。皆よりワンテンポずれてたな。ちょっと抜けてて、お父さんは可愛いなって思ったで」 母も思い出して、吹き出すのを抑えながらケタケタ笑った。 「ほうやった!あの、テンポは美羽にしかできん、神業やわ。その神業できるくらいや、大丈夫やろ」 美羽は、更に不愉快になる。 「そんな笑わんでもええやん。やから、舞なんてできんで?それ絶対なん?」 先程まで、ケラケラ笑っていた両親が、急に真顔になる。 「そうや。これは絶対やし、逃げたらあかんで」 父親は、そう言って、冷たく目を逸す。 母親は、席を立ち、台所に行き洗い物を始めた。
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