思いのすべてを

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思いのすべてを

夜の当直を終えた和希は花音の病室へと向かう。花音は変わらずだが、世間はすでに新年を迎え新たな1年が始まっている。 病院の年末年始などないようなもので、特に和希は花音の事もありほぼ毎日様子を見に行っていた。 廉は病院に迷惑がかかるからとあの日を堺に来れなくなった。それに廉が3月で芸能界を引退する事が発表され、世間は引退理由を含め報道合戦のようにトップニュースとして扱っている。 先日、廉が涙ながらに伝えた記者への思いは都合のいいように面白く書かれ、さらに引退報道に拍車をかけている。 昨夜、廉と話し『あの世界は本当にクソみたいだな』と告げた和希に『うまく出来なかった俺が悪いんだよ』と廉は告げた。 花音の状況も常に廉に伝えてはいるが、毎日変わらない現状に和希も歯痒く『毎日同じ事しか言えないな』そう吐露する。 『いや、和希が側にいてくれるだけで俺は安心。俺はしばらくは動けそうにないから』廉の元気がないのを気にしながらも和希は通話を切った。
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