思いのすべてを

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廉はタクシーを降りてひたすら走る。 病院内に入り早足で進み、エレベーターを待つ時間ももどかしく階段を2段ずつかけ上がる。 深呼吸をして扉に手をかける。 ガラッ。 部屋の中にそっと入る。 花音はまだ体力がないから寝てる事が多いけど声をかければ目を覚ますから。もう大丈夫 昨夜の和希の言葉を思い出し廉はそっと花音の横に椅子を持ってきて座る。 花音の穏やかな顔を見ながら廉は微笑む。 良かった。 良かったね。花音。 そう廉は心の中で呟く。 花音のまぶたが少し揺らぎゆっくりと開く。 花音は廉を視界にとらえるとふわっと微笑んだ。昔から変わらない廉の大好きな笑顔だ。 しばらく2人は見つめ合ったまま微笑む。 『おかえり花音』 『ただいま廉君』 笑いあって見つめ合う2人の姿をそっと廊下から和希は見る。 ズビっっ。 和希は視線を横にずらし先程から泣き腫らす美和に『何でお前が号泣してんの?』 と笑いながらハンカチを差し出す。 『良かった。本当に。花音。良かったっ』 ズズッ。グスっ。美和は溢れ出す涙が止まらず号泣する。 『コーヒーでも奢るよ』と和希は美和を誘いその場を離れる。 まだ、しばらくは2人にしといてやりたい。 和希は後ろをチラッと振り返り、2人の姿を視界にとらえて微笑む。 良かったな。廉。 そう呟いて。
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