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匠に呼び出された廉はカフェfugiに向かっていた。お店は定休日で花音は美和と久しぶりの外出をしていて不在だ。
『呼び出してすまないね。』匠は珈琲を廉に出し椅子に座る。
『いえ、何か大事なお話があるんですよね』
廉は匠に向き合って座る。
『もしかして、花音さんと匠さんの事ですか?』
廉は思い切って話を切り出す。
『気づいてたのかい。』
『手術が終わった時に、花音さんの事を娘って言われてたので』
匠は深く息を吐き廉に視線を移す。
『花音は、私と花音の母である百合の娘だ。気づいたのは花音と会ってからだけれど。』
匠は百合と自分が連れ子の再婚で血のつながりがなく将来は一緒になるつもりだった事を廉に伝えた。
『彼女にこの事は?』
『うん。言うべき時に言うつもりだ。
君にこの話をしたのは私以外に花音を守ってくれる人に言っておきたいと考えてね。私もいつまであの子の側にいれるかは分からないから。』
それと、、、。
君は花音とずっと一緒にいる覚悟があるかい?
匠は廉の目を真っ直ぐに見ている。
『はい』廉は匠の目を見て言い切る。
『うん。ありがとう。
君がもし、花音と一緒に生きてくれたら私も安心だけど、花音の体は完治したわけではないんだ。だから体に負担がかかる事は難しい。おそらく子供を授かるのは難しいと思うし、いつまた悪化するかわからない。
こんな話をして申し訳ないが、君にも将来がある。だから、、、』
『あの、』廉は匠の話を止める。
『あの、僕が花音さんといると幸せなんです。
それに、先の事より今、彼女と一緒にいられるだけで充分です。ずっと、ずっと探していたから。だから今が幸せなんです』廉は笑顔で答える。
『花音さんとは12歳で出会ってすぐに離れ離れになったので、今やっとまた出会えてその時の続きが出来るんです。そんな幸せが続くってすごくすごい事だと思うんです。だから、僕はずっと花音さんと一緒にいます。あ、もちろん彼女の気持ちを聞かないとですけど』それにまだちゃんと言えてないので。と断りを入れる。
『そうか。なら私からは何も言わないでおくよ。でも紫悠君、幼い時も今も花音の側にいてくれて本当にありがとう』匠は頭を下げた。
『いえ、僕が側に居たかっただけですから』と廉は慌てて席を立つ。
匠は珈琲入れ直すね。と席を立つ。
その顔はすごく穏やかなものだった。
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